2019年11月03日

10/13 ソワレ K-BALLET COMPANY マダム・バタフライ(2)

で、2幕。ピンカートンは日本での任期が終わり、本国へと戻って既に数年。バタフライはピンカートンとの間に生まれた息子と、世話係のスズキと共に長崎の屋敷で彼の帰りを待つ。バタフライは断髪し、洋装を身に纏い、改宗までした夫への貞節を保ち続けていることを示す。
既に破局を予感させる雰囲気が舞台には漂っている。帰らない夫を恋い慕って幻想の彼とワルツを踊るバタフライ。だが冷静に立ち戻れば夫はおらず、彼の軍帽だけが残されている。

この後はしばらくマイムのシーンが続きます。マイムって、舞台にとって重要なことだと思うし、演者は丁寧に演技していたと思うけど、連続するせいか、この辺からどうも退屈で…。
う〜ん、やっぱりなんか、それだけでなく、どうも薄い感じがしました。バタフライは張り詰めた緊張感があって、彼女自身破局を予感していたのではないかと私は感じましたが、武家の娘としての誇り高さのようなものは特に伝わらず。スズキは、バタフライのための舞台装置としてのみの存在かな。彼女自身の思いはあまり分からなかった。後で出てくるピンカートン夫妻来訪のシーンでスズキ怒りのヴァリエーションがあってもいいくらい、などとも思ったり。
シャープレスは人間として誠実であろうという感じが佇まいからもしてよかったです。

立派な軍人となり、バタフライに求婚しにくるヤマドリ。息子の存在を目にしてぎょっとするあたり、リアルでよい。で、大した葛藤も見せず、彼は舞台から退場。え〜惜しい! と思った。大和和紀先生の中編にレディーミツコっていう傑作があって、もちろんこれはクーデンホーフミツコ伯爵夫人の漫画です。奇しくもバタフライと同じ、外国人男性と結婚した明治期の女性の話。バタフライと違ってミツコは妾でなく正妻だけど。ミツコが夫、クーデンホーフ=カレルギー伯爵の死後、一族と対立しながらオーストリアで子供を抱えて領地経営に奔走するところで、一度だけロマンスが生まれかけて、燃え上がる前に消えてしまうのよね。名前忘れたけど、誠実な学者肌の男性が、日本人であるミツコをよく支えて、お互い仄かな恋心を抱いてしまうという。でもそれが社交界の噂になりかけ、自分の存在がミツコのためにならないとよく理解している彼は自ら外国へ渡って身を引く。彼はミツコへの愛と尊敬のために身を引くわけで、ミツコもそれを分かっている。というかなり切ないくだり。
ヤマドリは全然、この男性(名前忘れてしまったが…)に及ばない。さくっと退場しちゃうしね。この男性くらいのドラマを見せてくれたらよかったのに〜! などと、この辺は舞台を見ながらレディーミツコを思い出していたのでした。
ついでにミツコの夫カレルギー伯爵は、日本から帰国しなければならなくなった時身を引こうとしたミツコを引き留めてオーストリア・ハンガリー二重帝国に連れていくんだよね〜。ヨーロッパに渡ってからのミツコは想像を絶する苦労をするわけではあるけど、バタフライを単なる現地妻としてのみ愛し、その通りにのみ扱ったピンカートンとは人間が違うっていうか。ピンカートンはそういう役割だけどさ。

で、大砲の音が鳴り響き、薄くて退屈なシーンがようやく終わります。おーやっとピンカートン帰ってきたか。というわけで2幕2場。彼を迎えるため庭へ走り出るバタフライ。が、ピンカートンは何と正妻ケイトを伴っていた。バタフライの息子を連れにきたのですね。ケイトは1幕の時の溌溂とした若々しさはなりを潜め、押しも押されもせぬ正妻といった、威儀を正した様子でバタフライに接します。バタフライに感情移入していると、ケイトは憎たらしい役だと思うんだけど、私は今回はあまりそう感じず。彼女も婚約者に裏切られた身の上だしね。そんで、別に大和和紀先生の話の続きじゃないんだけど、源氏物語で言えばケイトは紫の上でバタフライは明石の君で、夫が他所に作った子供を引き取る側の正妻には正妻の、血のにじむような葛藤があるのを我々は想像できるわけでもありまして。悪いのは全部ピンカートン!

ケイトが息子を連れて行くのを、地面にひれ伏したまま送るバタフライ。キョドるピンカートン。というかこいつは再登場してからずっとキョドりっぱなしで、堂々としたケイトとの対比もあり、ほんとアカン奴だなって感じ。バレエ界のアカン奴シリーズでアルブレヒトやソロルといった歴戦の猛者がいると思うんだけど、こいつらには恋人を裏切った後それぞれ思いを発露させる踊りがあるから、見る側もキャラクターの好き嫌いはあるにせよ見所があると思うんですが。でもピンカートンはキョドってるだけで、もっと踊ってもよかったのでは? という感じ。
やがてケイトもピンカートンも、その他全てが舞台から消え去って行っても、まだじっとひれ伏したまま動かないバタフライからは彼女の悲しみが伝わりすぎるほどに伝わって来て、劇場内が緊張したような気がしました。

でも〜、なんかここに至るまでに大分退屈モードだった私は、すっかり集中力をなくしてしまって、感情移入もそんなにできなくて、なんせバタフライのこと「頭ヤバい子かな」って思ってるからね…、自分で書いててて、「まだ思ってんのかよ!」ってびっくりするけどね…。
振袖を翻して、バタフライが最後の踊りを踊る。彼女は何を思って踊っているんだろう。裏切られた愛への怒りはなく、悲しみか。というと、悲しみばかりというのもいまいちぴったりこない。ここで語られたのは彼女の矜持なのかなあ。なんて考えつつ、やっぱ袖が邪魔、と思うのであった。そして袖が邪魔で踊りに集中できず(袖だけが原因じゃないけど)、踊りのここが良かったとかここがいまいちだったとか、そういう印象も残っていない。

ラスト。幼い息子がバタフライを求めて戻ってくる。そして(1)で書いたとおり、バタフライは彼に目隠しをして彼の目の前で父の短剣によって自害する。短剣は息子の手に渡り、彼は駆け出していく。

ラスト、舞台としては美しい場面だったんですよね。でも息子にそんな呪いはかけたくないよー。誇り高い武家の娘なら、父から受け継いだ呪いは断ち切って、自分で終わりにしてほしいよー。それが自害するより何より本当の強さでは?
というわけで舞台としては美しくとも私の感情としては釈然としないまま、終幕。

私、そんなにバレエに詳しいわけでもないし審美眼があるわけでもないんで恐縮ですが、踊りのシーンが少なくて(特に2幕)、踊りもいまいちなところがちょくちょくあって、正直あんまり面白くなかった。ピンカートンとケイトのPDD、ピンカートンとバタフライのPDDは気に入りましたが。これはピンカートン演じる山本雅也さんの波長が私に合ったということかも。
そんなわけで、一番良かったのはオーケストラという結論になってしまいましたとさ。

Kバレエって、他のカンパニーの公演よりちょっとお値段お高めなんですよね。12,000円(たぶん)払ってこれか〜って、舞台終わったときは正直思っちゃった。今回パンフレットも購入していて、これも3,000円もしたし。いや、嫌なら見るなよ、買うなよっていうのは正論だと思うけど。
マダム・バタフライについては、今後余程のブラッシュアップがなければもう見ないと思います。
でも、舞台って見る側のコンディションも重要だから、今日の私でなければまた違う楽しみ方ができたのかなあ。

image1.jpeg
前回の記事で貼るの忘れた。3,000円のパンフレット。浮き出し箔+フランス製本と装丁凝ってるけど、装丁凝らなくていいから少しでも値段下がると嬉しい。装丁まで含めてひとつの作品というのはよく理解してはいますが…。クレオパトラの時の2,500円も結構高いな〜って思ったけど、でもクレオパトラは舞台の内容が気に入ったのでね。いや、でも、2,000円くらいだったらやっぱ嬉しいな。ケチ臭いことばっか言ってますが。

posted by 綾瀬 at 01:29| Comment(0) | 雑記・バレエ

2019年11月23日

10/20 マチネ 新国立劇場バレエ団「ロメオとジュリエット」

※12/1追記:タイトル間違ってソワレって書いてました。マチネです〜。すみません間違えた! 修正しました。

バレエの感想なんて見たすぐ後に書かないといかんよな〜と思いつつ、1ヶ月以上経ってしまいました。なので短めに。

というわけで2019/2020シーズン、新国立バレエ団1発目の演目はマクミラン版のロミジュリです! マクミラン版ロミジュリっていう時点で最高〜、実際見たらもっと最高! とても熱い舞台でした。

舞踊芸術監督:大原永子
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣装:ポール・アンドリュース
照明:沢田祐二
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ジュリエット:米沢唯
ロメオ:渡邊峻郁
マキューシオ:木下嘉人
ティボルト:福岡雄大
ベンヴォーリオ:速水渉悟
パリス:井澤駿
キャピュレット卿:輪島拓也
キャピュレット夫人:本島美和
乳母:楠元郁子
ロザライン:関 晶帆
大公:内藤 博
ロレンス神父:菅野英男
モンタギュー卿:古川和則
モンタギュー夫人:玉井るい


このロミジュリ(新国はロメジュリか)ね〜、すごく良かったんですよー! 私ちょっと泣いてしまった。ロメオが可哀想で、可哀想で…。
渡邊さん演じるロメオは初めて見るタイプのロメオでした。だってキョロ充なんぞ。ロメオが。キョロ充。
マキューシオとベンヴォーリオは陽キャでしたね〜。特にマキューシオは、お馴染み根っからの陽キャ。ベンヴォーリオはもうちょっと真面目さあり。で、ですね。ロメオはマキュたちに引っ張られる感じの陰キャっつーか、陽キャと並んでるだけにまさにキョロ充。3馬鹿は3人揃って陽キャなことが多い気がするんですけど、最初から、渡邊さんのロメオにはいわゆる底抜けの明るさ、浅薄さってなかったと思うの。ウエーイな中に属していながら、例えば未成年飲酒の場に居合わせてお酒を勧められても「いや、僕はあの、ちょっと……」って言いそうな感じ(でもはっきりとも断れない感じ)。ある意味、最初からちょっと翳があるとも言える。このロメオがね〜〜〜、すごく良かったんですよ〜〜〜。
キョロ充ロメオがジュリエットと出会って恋に落ちてしまって、忍んで彼女に会いに行く。お互いに愛を伝え合う。そして一夜にして大人の男性に成長する。とはいえ若人だから、キャピュレット家とモンタギュー家の争いを力ずくで収める力もない(そりゃそうだ)。でもジュリエットと秘密結婚して、もはやキャピュレット家は親戚、身内になったわけだから、今までのようにリア充仲間と小馬鹿にして諍いを起こすわけにもいかない。力ずくで収めることはできなくても、何とか争いを避けようと親友マキューシオを止めようとする。でもロメオがマキューシオを止めているところを、卑怯にもティボルトが背後から刺殺する。
このティボルトは酒に酔った勢いとかそういうのでなく、明確に、無防備な背中を殺意をもって刺していて、憎ったらしい奴でした。前にロイヤルシネマでギャリーさん演じるティボルトを見たときは、酒に酔っていた勢いとか色々あって刺してしまって、刺した後ティボルト(ギャリーさん)は愕然としたりあわわってなったり、で、またお酒飲んだり、というティボルトだったんですが、今回の福岡さん演じるティボルトはマキュを刺した後「ふふん」みたいな鼻で笑うような表情をしてみたり、本当に憎たらしい悪役で「お前が死ねばいいのに〜〜〜」と思わせる名演でした。ギャリーさんのティボルトも福岡さんのティボルトもどっちも素敵です。
で、親友マキューシオを殺害されたロメオ。自分が彼を引き留めていたせいで背後から刺殺される隙を作ってしまったという引け目もあるかもしれない。陰キャ寄りで、真面目系で、今までは友達に合わせてキャピュレット家を小馬鹿にしたりもしてたけど、ジュリエットとの秘密結婚後はどんなに煽られても剣をとれなかったのに、遂に剣をとって復讐してしまう。
で、倒れたティボルトの元に駆け付けてきたロメオの姑、キャピュレット夫人。演じる本島さんが本当にお美しい方で眼福。半狂乱になって髪を振り乱し、剣まで手に取るキャピュレット夫人のスカートの裾に頬を当てて許しを乞うロメオ。ここ泣いちゃったんですよね。え? ここ? って思う向きもあるかとおもうんですが、ロメオは本当にキャピュレット家と争いたくなかったし、親戚に誠意を示したかったし、本当に本心から夫人に許しを乞うてるんだよね、でも彼が許されることはなく、私たちは恋人たちがこの後死に向かって突き進んでいくしかないのを知ってる、っていうのが本当に切なくて、ロメオが可哀想で。
キャピュレット夫人も名演でした〜。人間としての彼女自身が見えるのってこのシーンだけで、他のシーンは夫に従順な良き妻、娘を気遣う優しい母、っていう、貴族女性の役割を果たしているシーンだけで、実際、彼女の人生の大半の時間はそういう役割を果たすものだったんだろうなって伝わってきます。でも、彼女にとってはティボルトとの不倫の恋が唯一彼女自身の本物の思いだったのでしょう。ロメオとジュリエットが二人だけで真実愛し合ったのと同じように、ティボルトとキャピュレット夫人もひっそりと本心からの愛を通じ合っていたんだ、彼女の一生に一度の恋もここで永遠に断ち切られたんだ、と思うと許しを乞うロメオも切なく、本当の愛を断ち切られてしまった彼女も切なく、やっぱ思い出しても泣けてきちゃう。
どーでもいいけど、昔はティボルトとキャピュレット夫人が不倫の恋人同士っだって知らなくて、このシーンで夫人がここまで取り乱す意味がよく分からなくて、「この人キャ夫人だと思ってたけどもしかしてキャ夫人じゃなくてティのおかんなのかな? もしくはティがジュリエットの従弟じゃなくて兄とかそういう設定に変えてるのかな?」とか思ってましたね…。

で、以降、ロメオとジュリエットは様々な行き違いから遂にはふたりとも死ぬしかなくなってしまうわけだけど、偉いのは漫然と死に向かったのでなく、生きて愛を貫くために戦って、でも上手くいかずに敗北して死んでしまうという点だと思います。人間性を確立し、自分たちの人生を勝ち取るために戦った。でも上手くいかなかった…。人間ドラマですね。

ロメジュリは衣装も豪華で美しく、見ていて楽しいるんるん 私はやっぱり煌びやかな衣装が好きだな〜。でも、マンドリンの踊りのミノムシ衣装はなんぞ?とやっぱ思っちゃう。普通の旅芸人っぽい衣装ではいかんかったのであろうか…。市民でないというのが一目で分かるのはある意味分かりやすいけど。どうでもいいけどここで他カップルの結婚式を見ていて自分とジュリエットの結婚式を妄想するロメオはキョロ充なのもあってすごくよかったです。その夢は叶わないんだけどさ。

それにしても全幕見ていて思うんですが、ロメジュリってホント3馬鹿は最初から最後まで(マキューシオとベンヴォーリオはマキュが死ぬまで)出ずっぱりで、男性ダンサーを鬼のように躍らせる鬼畜な演目だな〜と思います。でも見ている方は嬉しい! 3馬鹿はさすがの踊りでした。息の合った振る舞い、音楽性の高さ、3人で踊るシーンは本当に楽しい。高い跳躍に鋭い回転、きびきびとしたダイナミックな動きなど、テクニックの高さを感じる踊りでもありました。これだけ踊れるダンサーがこんなに沢山いるなんていい国だな日本〜!
さて、マキューシオの私的一番の見所は死の直前、ロメオを毅然と指さすところなんですが、木下さん演じるマキューシオは、それまでアホっぽい陽キャだったマキュが彼の中の怨念を爆発させる、彼自身のドラマや人生をもっと見たかった、と思わせる演技でした。
ただ、木下さんの踊っているところ、ちょっと膝が気になる。ロメオとベンヴォと見比べて、ふたりは気にならないんだけど、木下マキュだけちょっと膝が、なんかかくっとしてる気がして。膝が気にならなくなるともっと素敵だな! 私マリインスキーのキムキミン様好きなんだけど、好きなんだけど、彼も膝(たまに肘も)が気になる…。膝にこだわりがあるのだろうか…。
そうだ、マキューシオって、彼が死ぬときの演出が「もう分かったからそろそろ死んでいいよ」と思うくらいなかなか死なないことが多いと思うんだけど、今回のロメジュリでは割りとさくっとお亡くなりになって、しつこくなくてよかったです。あそこ、ほんと「死んでいいよ、はよ次いこ」って思ってしまうことあるからな…。

あとそうだ、パリス。パリスも本当にカンパニーやダンサーによって毎回すごい違うパリスだと思うんだけど、今回のパリスは別に格好いいとかはないけど普通に真面目で誠実そうなパリスで、ジュリエットに拒否される理由が分からず戸惑ったりムッとしたり、で、ムッとしても後を引かないあたりが「基本誠実でお坊ちゃんでお人好しなんだな」って感じでよかったし、結局ジュリエットに拒否される理由も分からないまま突然殺されちゃう(拒絶の理由は死の直前に悟ったかもしれない)のが可哀想でもありました。
私はパリスが格好いいともうロメオじゃなくてパリスでいいじゃんって思っちゃうんですが(どうでもいい情報)、井澤駿さん演じるこのパリスは、もしジュリエットがロメオと出会わず彼と普通に結婚していたら、少なくともキャピュレット夫妻よりは心の通じ合った温かく平凡な家庭が作れたんじゃないかな〜って感じがしました。

オーケストラはところどころちょっと微妙でした〜。金管中音域弱いかな。

と、まあ特に印象深かったところを中心に手短に振り返ったつもりだったけど結構長くなったな。今回のロメジュリがすごくよかったので新国バレエをもっと見たい欲が高まりました。とりあえず12月のくるみと2月のマノンはチケット買いました(ムンタギロフ回)。マノンは買い足したいかも〜。ムンギロフ様客演ありがとうございます! お怪我などなさらず無事に日本においでくださいませ〜〜〜!!

そうだ、話があっちこっち飛ぶんだけど、んで何の本で読んだか忘れちゃったんだけど、キャピュレット家とモンタギュー家の争いって、単に仲が悪いっていうのじゃなくて皇帝派か教皇派かの争いだそうで、どちらが勝利するかでヴェローナの街の運命も変わるっていう、個人がどうにか仲裁して何とかなるような問題ではないんだそうです。どちらにも、一族の栄達という欲望もあろうが同時に街のための正義も信念もあろうし、どちらが勝っても街にとってメリットデメリットがあるという。この皇帝派と教皇派の争いの主人公たちは、カノッサの屈辱で有名なハインリッヒ4世とグレゴリウス7世ということかと(多分…)。
そういう背景を知ると、ロメオとジュリエットの恋がいかに絶望的なものだったか、本当に絶望的で可哀想な気持ちになります。

あとそうだ、ロメオを演じた渡邊さんは千秋楽の後プリンシパルに昇進されたそうですね。プリンシパルにふさわしい実力だと思います! おめでとうございま〜す!



posted by 綾瀬 at 21:59| Comment(0) | 雑記・バレエ

2019年12月11日

11/21 ソワレ ミハイロフスキー劇場バレエ「パリの炎」

ちょっとお金貯めようと思ってバレエ鑑賞は控えようかな〜って思ってたんですよねえ。思ってたんですけど、大好きなパリの炎が! やって来る! ということでチケット買ってしまいました。そしてパリの炎だけで我慢できずに眠りの森の美女も買ってしまいました。結果としては買って大正解! 両方ともすごく良かったんですよ〜! 満足度高い舞台でした。私はレニングラード国立劇場時代の来日公演は知らなくて、ミハイロフスキー劇場バレエは初めての観劇だったんですが、また見たいと思うバレエ団でした。

でも不満点も幾つかあって、先に書いておこう。ツイッターではぼちぼち呟いてしまいましたが、まずチケットが高ーい! SS席で26,000円です。パリオペ、ロイヤル、ボリショイ、マリインスキー並みです。そしてオーケストラも帯同してないし…。
いいバレエ団だと思うけど、パリオペやロイヤルほどのブランド感があるのか!? ということや、ボリショイマリインスキーほど踊れるのか!? ということを考えると、さすがにお高すぎなのです。私は今回パリの炎A席、眠りの森の美女C席で購入しましたが、まあいい舞台なんだけど、やっぱ高かったよね。5000円分くらい高い(席のランクにもよるから5000円分っていうか大体2割分くらいかな)。そのせいもあってか、劇場内がガラガラで…。こんなガラガラの東京文化会館大ホール初めて見ました。
出演料高かったのかな〜とか勘ぐってしまいます。日本はどんどん貧乏になっていくから世界的な相場ではこんなものなのかもしれない…かも……所得爆上げお待ちしております。

そしてもう一つの不満は休憩時間長すぎ! ということ。今回上演されたメッセレル版のパリの炎は全3幕なのですが、1幕30分、2幕20分、3幕25分とかなり話がサクサク進みました。サクサク進むのはいいんだけど、幕と幕の間が25分もあり、2幕なんて休憩のほうが長いじゃん! という事態。1幕と2幕は合わせて1幕でもいいかも。もしくは2幕と3幕の間の休憩はせめて15分とかで…(でも15分だとトイレから帰ってこられない人もいるかも)。

と、最初に不満をいっぱい書いてしまいましたが(Twitterでも言ってる人結構いた)、でも楽しい舞台だったんですよ〜!!


芸術監督:ナチョ・ドゥアト
作曲:ボリス・アサフィエフ
振付:ワリシー・ワイノーネン
改訂振付:ミハイル・メッセレル
舞台美術・衣装:ヴァチェスラフ・オクネフ
照明デザイン:アレクサンドル・キビトゥキン
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

ジャンヌ:オクサーナ・ボンダレワ
フィリップ:ジュリアン・マッケイ
ガスパール(農夫):ロマン・ペチュコフ
ジャック:アレクサンドラ・バトゥーリナ
ディアナ・ミレイユ(女優):イリーナ・ペレン
アントワーヌ・ミストラル(俳優):ヴィクトル・レベデフ
ボールガール侯爵:ミハイル・シヴァコフ
ルイ十六世:アレクセイ・マラーホフ
マリー・アントワネット:アーラ・マトヴェーエワ
キューピッド:サビーナ・ヤパーロワ
テレーザ(バスク人):マリアム・ユグレヘリーゼ
バスク人の踊り:ウラジミール・ツァル、デニス・アリエフ、セルゲイ・ストレルコフ、オリガ・セミョーノワ
オーヴェルニュの踊り:アンナ・ノボショーロワ、アンナ・スコヴァ、ナイリア・ラティポワ、タチアナ・ミリツェワ、ニコライ・アルジャエフ、アントン・アパスキン、マクシム・ポドショーノフ、パヴェル・ヴィノグラードフ
アレゴリック・ダンス
自由:イリーナ・ペレン、マラト・シュミウノフ
平等:スヴェトラーナ・ベドネンコ、アンドレア・ラザコヴァ、ユリア・ルキヤネンコ
友愛:ニキータ・ナザロフ、アンドレイ・ヤフニューク


私が今まで見たことのあるパリの炎はボリショイのラトマンスキー版だけです。しかもシネマだけなので、生の舞台は今回初めて! とっても楽しみにしていました。なんでも今回上演される版は、ワイノーネンの原典版を極力再現し、振付の失われた部分などをメッセレルが創作した「復元版」とのことです。原典版の振付は、現在では殆ど失われてしまっているそう。
それで、会場に着いてパンフレットを購入して初めて知ったのですが、このメッセレル版(ワイノーネン復元版)では、ジェロームがいない! アデリーヌもいない! そう、あのカップルがいないんです〜知らなかった!! あのカップルとそれにまつわるエピソードはラトマンスキー版で創造されたものだったのですね。そういうわけで、ラトマンスキー版とメッセレル版ではそもそも台本がかなり違っていて、言うなればラトマンスキー版はドラマ盛り盛りこってり版、メッセレル版はすっきりシンプル版という感じでした。

で、そのすっきりシンプル版。幕が上がると板付きでジャンヌ、ジャック、ガスパールの親子が。ボールガール侯爵に荷車を引っ繰り返されるという嫌がらせをされてしまいます。ボールガール侯爵がエロ侯爵じゃなくなってた・笑
ラトマンスキー版の侯爵はエロ侯爵でさ〜、娘の前でさえよくやるよほんと…って感じなんです。
で、荷車を引っ繰り返されて困っていたところにフィリップらマルセイユの義勇軍が通りかかり、ジャンヌたちを助ける。フィリップは顔見せという感じで、あっさりと宮廷のシーンへ。
主人公格のジャンヌもフィリップもここまでではあまり踊らないので、宮廷のシーンが終わったらたっぷり踊るのかなと思ったらそのまま一幕が終わってしまった。おお〜、サクサク進むぅ。主人公たちの初登場の場面なんだからもうちょっと踊ってくれてもよかった…、けど、ストーリー的にそんな踊る場面でもないから舞台が停滞しちゃうかな?

宮廷シーン、すごくよかったです。俳優のミストラルはレべデフ、女優はペレン。ふたりともプリンシパルで、プリンシパルの名にふさわしい優美な踊りでした。レべデフは、ラインの曲線感がもう少し増すともっと優美かもしれない。でも、この人の王子も見てみたいと思う美しい踊り。ペレンはさすがの存在感と華やかさ、テクニック。この人がこのバレエ団のナンバーワンなんだなって分かる。そしてこの場面の貴族たちの衣装も本当に素晴らしい。特に貴婦人たちの群青色のドレスは舞台としての最適解。
宮廷シーンはフランスに対するリスペクトを非常に感じる構成でした。フランス的な良いもの、美しいものを表現していたと思います。ロシアより愛をこめてだな〜!
あ、そうだ、ラトマンスキー版の宮廷バレエだと「リナルドとアルミーダ」をやるけど、メッセレル版ではそれはなし。「リナルドとアルミーダ」のシーン、私ちょっと飽きちゃう方なのですが(すんません)、メッセレル版の宮廷バレエシーンは美しさに見とれているうちに終わってしまい、もっと踊ってほしいとまで思いました。でも、ルイ十六世たちの滑稽味のあるポジショニング&回転ダンスはメッセレル版にはなくて、あの謎ダンス結構好きだからラトマンスキーはよくあの謎ダンスを入れてくれたと思います(振付が謎なのでなく、まあ何というか存在が謎というか…、その存在がルイ十六世のキャラクターを強烈に印象付けるいい振付なのですが、まあ何と言うか謎ダンスというのがかなり適切な表現かと)。

2幕。フィリップらマルセイユの義勇軍はパリに到着し、各地からやって来ていた他の地域の人々とも合流、革命への闘志を燃やす。ラトマンスキー版では主役たちが躍るバスク・ダンスも、ちゃんとバスク人の役の人々が踊る。このバスク・ダンスはラトマンスキー版でもそのまま取り入れられていて、皆好きなシーンだと思うけど、ワイノーネンの原振付の秀逸さが証明されていると思った。素晴らしい振付だけに、主人公格の人々に踊らせたいという気持ちは分かる。でもラト版で、マルセイユの義勇軍のフィリップやその辺の農民のジェロームやジャンヌがバスクの踊りを踊るのはよく考えると変ではあるかも・笑 ラト版でもバスク人はちゃんと登場するしね。バスク人たちと仲良くなったからあえてバスクの踊りを踊っていると脳内補完しておく。もしかしてジャンヌたちがバスク地方出身だったらすみません。
踊りのキレはさすがにボリショイの圧勝かな〜と思いつつ(シネマやDVDでしか見たことないけど)、大好きなバスク・ダンスを生で見れて嬉しかったです。テレーザのユグレヘリーゼは大きく背中をしならせ、バスク人たちを率いる勇ましさ、切れ味の鋭さ、ダイナミックさのある踊りでした。ただ、まあ、さっきも言ったけどコールドも含めた全体的な踊りのキレ、迫力はやっぱボリショイの方がよいですね。あそこは最強集団なので然もありなむでしょうが…。

2幕2場では、遂に革命軍がテュイルリー宮殿へ雪崩れ込みます。んが、ここがさあ、映像なんだよね! 宮廷に雪崩れ込んだ後はさすがに舞台上で演じられますが、革命軍が宮殿に押し寄せるシーンがさあ。私はバレエで映像を使うことに必ずしも否定的ではないのですが(映像も舞台装置の一つだと思うから)、でも、この使い方はちょっと違うでしょうと思ってしまう。群衆が押し寄せるシーンなんて、それこそバレエで演じて革命の高まりを表現して欲しかった。ここはちょっとマイナスでした。
宮殿に押し入った後は殺陣なども繰り広げられます。ここでフィリップとボールガール侯爵の殺陣のシーンもあったんだけど、ボールガール侯爵のマントが腕に絡んでしまって、たぶんハプニングだったかと。でもそのマントは舞台上の小道具でもあって、ボールガール侯爵はそのマントでフィリップの足を絡めとったりするんですよね。その辺は面白かったです。でも、殺陣自体はマクミラン版ロミジュリとかの方がガンガン斬り合うので良いです。ちなみにフィリップ役のマッケイとボールガール侯爵役のシヴァコフはバレエ団の内で師弟関係であり、ここは舞台上では師弟対決! という面白みもありました。
その師弟対決も、はっきり決着がつくというよりは何だか有耶無耶の内にボールガール侯爵が大勢に取り押さえられるって感じで、ちょっとグダグダなところが妙にリアルでした・笑

3幕。革命が成功し、といっても史実的にはまだまだこれからいろんなエピソードがあるわけですが、とりあえずこのバレエの上では貴族は倒され、民衆たちの新しい時代がやって来た! という喜びが高らかに歌われる幕です。2幕の最後でテレーザが死んじゃうんだけど、そこはあまり気にしないスタイル。
革命の成功を祝してアレゴリック・ダンスが繰り広げられます。白眉は自由を踊ったペレン、シェミウノフ夫妻。超絶難易度のリフトを次々繰り広げ、会場も盛り上がりました。特に片手でペレンを頭上に持ち上げたシェミウノフが片足立ちになるという振付は、男性のプリンシパルなら誰でもできるというような難易度ではないように思われ、2度目は少しバランスを崩したものの、よくぞやってくれたと思ったものです。
平等、友愛はやや平凡か。平等も友愛も、ついでにそのあとのマッケイのソロも、ずっこけてたしね。舞台が滑りやすいのか? ケガしないかな? って心配になってしまった。
友愛は切れ味の良い軽やかさが加わればさぞよかろうと思いました。

そしてジャンヌとフィリップの結婚。革命後初のカップルの誕生を祝福する民衆たち。
ジャンヌとフィリップのGPDDはみんな大好きお楽しみだと思うんですが、もちろん私も大好き!
ジャンヌを演じるボンダレワはゲスト・プリンシパルで、本拠地はマリインスキー(で、ファースト・ソリスト)。テクニックは圧倒的で、しかもそれを軽々やるから本当に軽やかで清新なジャンヌ。テクニックが強いと熟練感を感じてしまう時もあるけど、若々しいジャンヌでした。グラン・フェッテは男性のような変形型で、しかも後半もガンガンダブルを入れて、でも全然力んでない〜、自然で溌溂として、華もある。素敵でした。
フィリップ演じるマッケイは、これからのダンサーですね。マッケイ、でも、とってもイケメンなの。ジュリアン君と呼びたい。今までバレエダンサーのお顔はそんなに気にしたことがなかったのですが、ジュリアン君があまりに美しいため、何だか色々応援したくなってしまいました。テクニックは色々磨くべきところがある感じです。ファースト・ソリストには7、8年早いかな…というのが正直なところ。結構最初から跳躍や回転でバランスを崩していたりしたので、緊張してるのかな? 力んでるのかな? とかそわそわしてしまい、私ゃ彼の親かよ! って自分で突っ込んでしまった。
結構粗削りというか、荒っぽい感じの踊り方で、でもこれはこの後の眠りではあまり感じなかったので、フィリップとしての役作りだったのかな。彼自身が若いのと、その役作りが若いのとで、フィリップも本当に若くしなやかで、向こう見ずな青年らしさが出ていました。
で、バリエーションでは一回手をついてしまうというはっきりしたミスがありましたが、そこで落ち込まずにその後を挽回して最後はきちっと綺麗な姿勢で回転を決めたのはよかったです。足の形が綺麗にきまっていました。そういう強さがあるのであれば、これからも成長できると思います。今回の舞台では実力を見せつけることはできなかったと思うけど、お顔が美しいのもあって(?)華やかさはあるので、先生や劇団に大事に育ててもらえばいいダンサーになるでしょう。10年後を見てみたいです。…とか書いていたら、なんとジュリアン君ミハイロフスキーを退団してしまいました。あっるぇー!! マジで! 厳密には、東京公演の時点で既に退団していた(?)そうです。ただ、東京公演はミハイロフスキーとして最後の舞台だったとのこと。
う〜ん、フリーでやるより今は組織に所属して育ててもらった方がいいフェーズでは…と思いましたが、まあ本人の選択なので! それにもしかしたら次の所属先が決まってるのかもしれないし、どこでやるにしても(フリーでやるにしても)、また日本に来てね〜!!
ジュリアン君があまりにイケメンなので、フォローしたいがためにインスタを始めてしまいました。

カーテンコール。最後はスタオベでした。私も立った。ジュリアン君のお顔があまりに美しかったので。あと、会場がガラガラで演者やスタッフに申し訳ない気がして(いや私が申し訳ながる必要は全くないんだけど)、せめて盛り上げようという思いもあって、多分その気持ちは会場全体で結構共通だったんじゃないかな〜って思います。思い込みかもですが。テクニック的には、プリンシパル勢はさすがでしたが、主役のマッケイもコールドも、そんなに上手くない人が多くて(別に下手とは言ってないです)、若い人ばっか来てるのか? と思いましたが、そういう若い人たちにこれからも努力して良いダンサーとして成長してもらいたいので、そういう応援の気持ちのスタオベでした。この拍手を糧にして今後も頑張ってほしいです。

拍手に応えてか、最後のカテコではジュリアン君がグランジュテで舞台袖に登場し、会場にどよめきが。続くペレン・シュミウノフ夫妻は何とリフトで登場してくれて、再びどよめく会場。ファンサービスたっぷりで嬉しかった。ありがとうございます!

多分だけど、ラトマンスキー版とメッセレル版では、ドラマチックなラトマンスキー版の方が好きな人の方が多いんじゃないかな…って感じはするんですが、でもメッセレル版の良さも捨て難く、私としては両方見ていきたい演目です。特にメッセレル版の宮廷舞踏のシーンやアレゴリック・ダンスは本当に好きです。でもラト版の闇堕ちエンドもやっぱり好きで…えへへ。

オーケストラは、何だか不思議でした。1幕の時はそんな上手じゃないな〜、あんまりよく聞こえないな〜って思ってたんですが、2幕から急に調子を上げて、音の広がりも響きもよくなって、なんだどうしたんだ? 休憩中に別の楽団に変わった?? と思うくらい上手になりました。びっくりした。不思議体験。

次は同じくミハイロフスキーの眠りの森の美女! 監督のドゥアトの振付です。

posted by 綾瀬 at 22:47| Comment(0) | 雑記・バレエ

2019年12月16日

11/24 ソワレ ミハイロフスキー劇場バレエ「眠りの森の美女」

バレエ鑑賞が続いています。
チケットがお高かった(まだ言う)ミハイロフスキー劇場バレエ来日公演、2演目目は眠りの森の美女です。最初はパリの炎だけにしておこうかなって思ってたんだけどさあ〜、何だかんだで眠り好きで、やっぱり見たくて…。


芸術監督:ナチョ・ドゥアト
作曲:ピョートル・チャイコフスキー
振付:ナチョ・ドゥアト
舞台美術・衣装:アンゲリーナ・アトラギッチ
照明デザイン:ブラッド・フィールズ
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

オーロラ姫:アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ
デジレ王子:エルネスト・ラティポフ
リラの精:スヴェトラーナ・ベドネンコ
妖精
純真の精:マリア・ドミトリエンコ
小麦花の精:エカテリーナ・オダレンコ
パンくずの精:エラ・ペルソン
カナリアの精:サビーナ・ヤパーロワ
勇気の精:オルガ・アルセニーナ
カラボス:ファルフ・ルジマトフ
フロレスタン王:アルチョム・マルコフ
王妃:オリガ・エミョーノワ
宝石
サファイヤ:オルガ・アルセニーナ
アメジスト:エカテリーナ・オダレンコ
ゴールド:田中美波、ジュリアン・マッケイ
仔猫:エフゲニア・チェトヴェリコヴァ
牡猫:アレクセイ・クズネツォフ
フロリナ王女:サビーナ・ヤパーロワ
青い鳥:イワン・ザイツェフ
赤ずきんちゃん:エカテリーナ・クレンコーヴァ
狼:セルゲイ・ストレルコフ


キャスト多いのでこの辺で…。

さて日本初演となるドゥアト版眠りですが、結論から言うと私はかなり好き! でも不満なところもある! でもドゥアトの、クラシックの文法とコンテ的な表現方法を融合させたクラシック演目かなり好き! もっと見たい! って感じでした。
不満を先に言っちゃおう。ローズアダージョと青い鳥〜〜〜!
ドゥアト版は、メッセレル版パリの炎もそうだったけど、とにかくサクサク話が進みます。ちょっと退屈しそうな、ややもするとストーリーが停滞しかねないような踊りはカットカットカットって感じでした。なので、私のようにあまり鑑賞歴も長くない人間にはどんどん話が進むのと、ドゥアトの振付がかなり何を表現したいのかストレートで分かりやすいというのもあって、わくわく見ているうちにあっという間に終わってしまったのですが、でも、そこはカットしなくてもいいんじゃない〜〜〜??? というところもあったのです。それがローズアダージョと青い鳥。
ローズアダージョはさすがに丸々カットではなく、振付が簡易版っていうか、言うなれば廉価版って感じになっていまして、一番の見せ場は残ってたけど、まあローズアダージョはみんな大好きお楽しみだしプティパの振付に忠実な感じでやってくれてもよかったんじゃ…と思いました。ちょっとさみしー! オーロラの魅力フルに振り撒くところだし、ここはあっさりじゃなくこってりでもよかったよ〜!
青い鳥は、通常GPDD形式で踊ると思うんですが、バサッとカットしてこちらも短縮版でした。アダージョはあり、男女バリエーションはなんか廉価版w、コーダほぼ無し。だったかと(覚え違いしてたらすいません)。青い鳥もさ、みんな大好きお楽しみ(こればっかり)だしフルにやってくれてもよかったのに〜! と思いました。
あともうひとつ書いちゃおう。3幕ではオーロラとデジレの結婚を祝福するために色々な童話の登場人物たちがお祝いに駆け付ける有名なキャラクターダンスのシーンがあると思いますが(青い鳥もそう)、青い鳥をカットした分他の登場人物が沢山踊ってくれるのかな〜と思っていたのにそんなこともなく。白猫、赤ずきん、短縮版青い鳥、は踊ってくれたけど、シンデレラ、カエルの王様、美女と野獣カップルは踊ってくれず。え〜、このカップルたちも踊ってほしかったな〜。順番的にはカエルの王様、美女と野獣、シンデレラ、だったらストレートにオーロラとデジレのGPDDにつながるし。美女と野獣とシンデレラは逆でもいいけど。ドゥアト版に限らず、お祝いに来るだけで踊ってくれない童話の登場人物たちはよくいるんですが、来たからには踊らんかい!!!??? といつも思うのです。ドゥアトの振付でこのカップルたち見たかった。特に定番のシンデレラは踊ってよかったのでは?

よかったこと。フロレスタン王と王妃も踊る。若く仲良しな夫婦いいねえ! って思った。そして華やかな宮廷楽しそう。オーロラに祝福を授ける妖精たちの踊りの時短技(ちょっと面白かった。前の妖精がまだ踊ってるのに、次の妖精がすでにスタートポジションについて待機)。あと、妖精たちがカレピ付きで登場。カレピかどうか知らんけど、とにかくお付きを引き連れて登場してからのソロバリエーションでメリハリがありました。そしてカラボスの登場シーンの鮮やかな転換。舞台の真ん中に突然登場するカラボスすごかった。衣装、舞台装置は流石の美しさ。宮廷人たちの艶やかで豪奢な衣装、本当によかったです。妖精たちのチュチュも可愛かったし。童話の登場人物たちの衣装も綺麗で可愛い。あと、オーロラが眠っている間の100年の時間が貴婦人たちの衣装でも表現されていて面白かった。装置も美しくて、特に3幕の初めのところで大きな窓のようなところから童話の登場人物たちが舞台をのぞき込んでいるのはめちゃくちゃ可愛かった。ただ私の選んだ席がいまいちな座席で見切れが多く、残念(これは自分のせい)。見切れといえば、そのせいなのか、2幕のラストでオーロラがデジレにキスされて目覚めるシーン、多分オーロラが目覚めると茨が一斉に薔薇に変わるような演出だったと思うんだけど、なんか暗くてよく見えなかった。この辺の席だとこれくらい見づらい、ということがよく分かり勉強にはなりました。次はもっと見やすい席にする! お小遣いと相談ですがー。

ヴォロンツォーワ演じるオーロラ姫は、可憐で可愛くて溌溂として明るくて、これぞオーロラ! という魅力にあふれたお姫様でした。華やかでしたねえ。ローズアダージョでも毎回腕をアン・オーの位置に戻して頑張っていました。王子の手を取るときの手付きも優美で可愛かったです。可愛い姫を見ると恋してしまいそうになりますねえ〜でへへ。気持ち悪くてすみません。私ボリショイのスミルノワ様大好きなんですが、スミルノワ様大好きとはいえスミルノワ様のオーロラには特に恋しないので、ヴォロンツォーワのこのオーロラの個性、これからも大切にしてがんがん発揮していただきたいと思いました。

ラティポフ演じるデジレは、オーロラに比べるともう少し生身の人間らしさがある。そういう意味では住む世界の違う二人のカップル…という気もしないでもないですが、かといって完全に現実世界の人間というふうには演じられていないので、100年の年の差かな・笑
オーロラより少し生身の人間らしさがある、とはいえ、彼はちゃんと王子でした。悩める王子。レベデフほどの優美さは感じませんでしたが、品のある、王子らしい踊りで好印象でした。

ベドネンコのリラの精。端正な踊り。2幕、デジレを導くシーンでは堂々とした威厳を感じました。

ルジマトフのカラボス。忘れ去られた怒りを爆発させる素晴らしい怪演で、カラボスのようなキャラクターはこういう人に演じられてこそ舞台が生きると思いますが、だからこそ始末に困るというのも確かにそう。だって愛とかで倒されそうにないもん…。強い。圧倒的に強い。上半身が特に(ムキムキの筋肉が窺える衣装も上半身が強いと思う理由のひとつかも)。

あとは印象に残ったのは、2幕の冒頭で気鬱な感じのデジレを慰めようと踊りに誘う貴婦人。舞台袖にはけていく時も最後まで王子を気にしていて、彼女がデジレのことを本当に慰めたいと思っているのが伝わる演技。でも残念ながらどんなに彼女が元気づけようとしてもその思いは報われることなく…切ない。

そして全体的になんですが。実は、数日前にパリの炎を見た時は、超絶技巧を披露できる人もいれば正直へなちょこなテクニックのそこそこ人もいるな〜って思っちゃったんですね。でもこちらの眠りは、へなちょことは感じなかったんです。なんでだ。踊りこなしている回数とかか? 分かんないけどさ。眠りでは、抜きんでた超絶技巧の人はいませんでしたが(まあ振付の関係もある)、基本的に全体が一定水準以上の安定したテクニックと感じました。安心して見れました。

土壇場でのキャスト変更とか、チケットが高かった(まだ言ってる)とか、色々あったけど来日公演すごく楽しかったし、また来てほしいし、ミハイロフスキー現地に行きたいって思ったし、いい舞台でした。よかったです。
ドゥアトのクラシック振付がかなり私と相性が良いということも分かったので、これからも沢山見られるといいな!

posted by 綾瀬 at 23:21| Comment(0) | 雑記・バレエ

2020年01月12日

12/15 マチネ 新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」

やっぱりほぼ1ヶ月遅れのバレエ感想です。


芸術監督:大原永子
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:ウエイン・イーグリング
美術:川口直次
衣装:前田文子
照明:沢田祐二
指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京フィル・ハーモニー交響楽団
合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:長谷川久恵

クララ、こんぺい糖の精:池田理沙子
ドロッセルマイヤーの甥、くるみ割り人形、王子:奥村康祐
ドロッセルマイヤー:中屋正博
ルイーズ:奥田花純
ネズミの王様:木下嘉人
雪の結晶(ソリスト):柴山紗帆、飯野萌子
スペイン:朝枝尚子、廣田奈々、清水裕三郎
アラビア:渡辺与布、宇賀大将、小柴富久修、清水裕三郎、趙載範、中島駿野、福田紘也、中村啓、渡邊拓朗(※男性は交代出演)
中国:広瀬碧、井澤諒、橋一輝、渡部義紀(※男性は交代出演)
ロシア:福田圭吾、加藤朋子、菊地飛和、木村優子、関優奈、多田そのか、徳永比奈子(※女性は交代出演)
蝶々:奥田花純
花のワルツ(ソリスト):寺田亜沙子、細田千晶、速水渉悟、浜崎恵二朗

※すみません、交代出演の方はどなたか特定できていません。

私、くるみ割り人形自体があんまり好きじゃなくて、特にどこが好きじゃないって1幕前半、シュタルバウム家のクリスマスパーティーのシーンが正直退屈なんです。大人のちゃんとした公演を見に行っているのに子役がわちゃわちゃしてるのがなんかもう、つまんなくて。踊りも少ないし。
かといって子供たちの中でクララだけ大人のダンサーが演じているのも「さすがにちょっと」と思う方なんですけど。まあ、とにかくあんまり好きじゃないんです。
そしてこちらのイーグリング版のくるみ、私は今回が初めてなのですが、いまいち評判がよくないみたいですねあせあせ(飛び散る汗) という前評判、プラス元々あんまりくるみ好きじゃない…って、じゃあなんでチケット買ったんだー! って感じですが、でももしかしたら気に入るかもしれないしさ。ある日突然くるみ好きになるかもしれないし。
というわけでチケットを買ったのですが、実際公演を見て、とってもよかったですぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)

おい! って自分で突っ込んでしまいますが^^;

1幕前半のクリパのシーンは、まあ、やっぱ、ちょっとね。退屈でしたけど。子役たちがわーっと出てきて頑張って踊っていて、一生懸命踊ってるな〜とは思うけど、子供らの発表会を見ているような気分。
あとパーティーが始まる前のスケートのシーンも長いし、私的にはここは半分でいい。

クリパのシーンでよかったのはドロッセルマイヤーの甥の佇まいかな。少女クララがほのかな恋心というか、少女らしい憧れを抱くのがよく分かる格好いい年上のお兄さんの所作でした。
あと、クララの姉ルイーズとその取り巻きの男性たちの踊りはとてもよかったです。

で、いまいちあんまり得意でないクリパのシーンも終わり、いよいよクララの夢の世界。クララは子役から大人のダンサーへバトンタッチ。真夜中、ねずみたちとおもちゃの兵隊たちの戦いが始まって、大砲の弾が不発というコント(微笑ましい)も交えつつ話が進みます。

白眉はやはり何と言っても雪のワルツだと思います。このイーグリング版の雪のワルツは本当に素晴らしい振付で、終わらないでほしい、もっと見ていないと強く思うくらいでした。はあ、今思い出しても本当に綺麗な群舞だったなあ。ひとりひとりが表現する粉雪、複雑に変化するフォーメーション、振付も、それを見事に実現するダンサーも、抜きん出た技量だと感じます。珠玉の群舞です。

で、その綺麗な雪のワルツの世界に入り込む異物、ねずみたち。ねずみが邪魔ってよく言われてるのを見かけてたけど、うん、確かに邪魔かも…笑
究極に美しい雪たちに集中したい感はある。ねずみたちには悪いけど。

そして2幕。
ねずみの王様とくるみ割り人形の対決はお菓子の国にまでもつれ込みます。でも、なんか最終決戦が城の奥で行われて、ドアが閉められちゃうから観客からは見えないのよね。なのでねずみ殺害の決定的場面は観客には公開されず、ドアが閉まって開いたらねずみの王様はやっつけられていた、というのがちょっと尻すぼみかも。
とはいえここからはみんな大好き(最近このフレーズお気に入り)ディベルティスマンのコーナーです。
私は中国の踊りが好きなんだけど、イーグリング版はあの中国連続高難度ジャンプ(正式なパの名前分からずすみません)なしのバージョンでちょっと寂しい。
ロシアの福田さんの踊りはキレがありダイナミックで、客席からも喝采を浴びていました。さもありなんという素敵な踊りでした。
で、イーグリング版はフランスがなくて、代わりに蝶々。この蝶々をクララの姉ルイーズ役の人が演じる。ルイーズだけでなくクララの両親もディベルティスマンの中にこっそり登場しているんだけど、その辺がどうも分かりづらく、言われないと気付かないなーって感じ。クララの夢の世界に家族たちが登場するっていうのは、単純に家族愛の表現かとは思いますが…。
蝶々の踊り自体は、可愛らしく綺麗な振付だと思います。1幕のルイーズと重なる印象は特にはないですが。

花のワルツは、私としては雪のワルツに比べるとそこまで好きではない。振付がかなり難しそうだなと思います。ダンサーはよく踊っていて、新国のレベルの高さが裏打ちされていると感じますが、男性が女性を引きずる振付が多く、それがいまいち私的に綺麗な振付に思えなかったんですよね。
とはいえそこが全部でもないので、綺麗だなと思う瞬間も多かったのですが。特に衣装の裾を翻して回転する華麗な動きは目にも鮮やかでした。女性陣の衣装のオレンジ色が濃すぎる気はしますが。そうだ、そう、女性陣は濃い目のオレンジの衣装で、男性陣は薄い緑色の衣装で、女性が花、男性は茎とか葉っぱなのかなと思ったのですが、それにしても女性陣の衣装の色合いは濃く、それに引き換え男性陣の衣装の色合いはあまりに淡くて、それぞれ綺麗な色ではあるんだけどなんかちぐはぐで統一感がない感じがしてしまいました。

それはさておき、いつしかクララは自分の憧れを体現したような理想の女性、こんぺい糖の精に。くるみ割り人形も王子に。というわけでイーグリング版ではクララとこんぺい糖の精を同じ人物が踊り、ドロッセルマイヤーの甥とくるみ割り人形と王子を同じ人物が踊るバージョンでした。
最後はそのこんぺい糖の精と王子のGPDD。やることの多い、見応えのある振付。
こんぺい糖の池田さんは、緊張していたのかな? というくらい顔が強張っているような時があって、ちょっとハラハラしましたが、次第に笑顔を見せてくれるようになったので安心しました。ただこのように、お顔はちょっと緊張しているのかなとも感じる時間があったのですが、踊りの方は上半身の使い方が美しく、特にアームスが可憐で可愛らしくて好きです。そして音楽によく乗っているというだけにとどまらず、音楽を生み出そうとしているかのような、音のリズム、強弱、メロディーがよく表現された踊りだと感じました。
王子の奥村さんは、ずっと王子らしいスマイルを絶やさず、包容力のある王子で、こういう王子ならパートナーも安心して身を任せられるのではないかと感じました。所作が美しく、王子らしく、テクニックが精確で回転でも跳躍でもそれ以外のパでも手足があるべき美しい場所にぴたりと当てはまっている、素敵な踊りでした。もっと見ていたいな〜と思うけど、イーグリング版って結構王子(含むくるみ割り人形)役の人の踊るシーンが多いから、これ以上踊ってもらうのは鬼かもしれない・笑

気球が去っていくラスト、私はいいと思ったんだけどTwitterとか見るともしかしてあんまり評判よくない感じ?
本当に夢だったのかな? もしかして…? というのがあからさますぎる?
ドロッセルマイヤーと甥がシュタルバウム家を辞してから気球が飛ぶの早すぎ?
う〜ん、まあ私はいいと思うんだぜ。

と、あんまくるみ好きじゃない〜とかほざいておきながら、十分楽しんだ舞台でございました。イーグリング版、前評判ほどよくないことなかったと思いますが、一方でいまいちなところも分からなくはなかった。ただ、総合点で行くとかなり満足でしたグッド(上向き矢印)
見に行ってよかった!

posted by 綾瀬 at 01:17| Comment(0) | 雑記・バレエ

2020年02月24日

1/11 ソワレ キエフ・バレエ「白鳥の湖」

やっぱり1ヶ月以上遅れのバレエ感想です。
2020年最初のバレエ鑑賞は、キエフ・バレエの来日公演、「白鳥の湖」です。


原振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ、フョードル・ロプホフ
振付/演出:ワレリー・コフトゥン
作曲:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本:ウラジミール・ベギチェフ、ワシリー・ゲリツェル
舞台美術:マリヤ・レヴィーツカ
指揮:オレクシィ・バクラン
管弦楽:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団

オデット/オディール:エレーナ・フィリピエワ
ジークフリート王子:ニキータ・スハルコフ
ロットバルト:ヴィタリー・ネトルネンコ
王妃:クレーニャ・ノヴィコワ
パ・ド・トロワ:アレクサンドラ・パンチェンコ、アナスタシア・グルスカヤ、アンドリー・ガブリシキフ
大きな白鳥:アンナ・ボガティル、アナスタシア・グルスカヤ、エレーナ・ミスコ、アレクサンドラ・パンチェンコ
小さな白鳥:カテリーナ・カルチェンコ、カテリーナ・チュピナ、ユリア・ルビンツォーワ、タチアナ・ソコロワ
花嫁候補:アンナ・ボガティル、アナスタシア・グルスカヤ、エカテリーナ・クルク、アレクサンドラ・パンチェンコ
スペインの踊り:エレーナ・ミスコ、ナタリア・ヤクーシキナ、ミハイル・ドロボット、ウラジスラフ・ロマシェンコ
ナポリの踊り:アンドリー・ガブリシキフ
ハンガリーの踊り:ダニエラ・キペン、ドミトロ・チェボタル

※怪我によるキャスト変更があったような気がするようなしないような気がするのですが、記録が見当たらなかったので当日配布された配役表通りに記載しています。パンチェンコさんがムロムツェワさんに代わったような気が…気が……。違ってたらすみません。

白鳥の湖、特に深い思い入れもなく、そんなに積極的に見たいなーとも思っていない演目だったのですが、ウクライナの至宝フィリピエワ様のラスト・スワンということで、やっぱり見逃したくない〜と思いチケット購入。でも今回、別日のキャストでサラファーノフ・ノヴィコワご夫妻のゲスト回もあって、そっちも本当に見たかったんだ〜。しかし私の限られたおサラリーでは両方見るのはちょっと厳しい…、ただでさえ1月から3月までバレエ鑑賞予定ぎっちりだし…ということで、サラファーノフ・ノヴィコワご夫妻回は泣く泣く諦めました。しかしTwitterの感想とか見ると素晴らしい舞台だったようで、はあ毎日モヤシ食ってでも見に行けばよかったと後悔しています。

その私のお金のない話は置いておいて、フィリピエワ様のラスト・スワン。とてもとても心打たれる舞台でした。ほかの色々なバージョンの白鳥の湖も見たくなったし、キエフ・バレエのことも大好きになりました。

1幕
ジークフリート王子の成人の祝宴…の前振りの身内のどんちゃんのシーン。友人たちが王子を祝って踊り、王子もその輪の中に入って楽しく踊る。そうこうするうちに母王妃から花嫁を決めるよう言われ、「まだ結婚なんかしたくないし…」と鬱っぽくなる…というのが定番のような気もしますが、スハルコフ演じるこの王子はそんな鬱っぽい感じがしない・笑
若々しく向こう見ずで、花嫁を決めろと言われて鬱な気分よりも母王妃からもらった成人のお祝いの弓でヒャッハー狩りまくり! な感じがしました。
若く健康なくせにじめじめしてる王子より、(ちょっとおバカっぽいかもしれないけど)憂いを直視せず楽しい方に流される享楽的な王子というのもこれはこれで私はいいな〜って思いましたるんるん

で、版によっては2幕にあたるであろう白鳥たちの登場シーンは、このまま1幕2場として続きました。

フィリピエワ様登場!
恋に落ちる王子! 驚いて逃げようとするオデット。でも二人が見つめ合った瞬間に思いが通じ合ってしまった、というのがはっきりと分かる素晴らしい演技でした。これって、どうして観客にそう伝わるのかな〜。舞台って不思議。ハッとするほど説得力のある恋の発現でした。すごくすごく印象的な一瞬。
これまで私は、王子がオデットに恋するのは分からなくない。だってすっごく可愛い姫が出てきたんだから! でもオデットが王子に一目で恋する理由はよく分からない。ジークフリートは職業:王子かもしれないけど、だからナニ? みたいに思ってたところがあったんですが(なんかひどい)、そういうのじゃないんだよ! ジークフリートにとってオデットは運命だったかもしれないけど、オデットにとってもジークフリートは運命だったんだよ! 何が好きとかどこがいいとか、そういうの関係ないんだよ、恋に落ちるには! って思いましたね。今回。

オデット以外の白鳥たちの踊りも端正で美しく、フォーメーションも綺麗で、楽しく見ているうちに夜明けがやって来て、オデットとジークフリートは離れ離れに。

そして2幕。ジークフリートの成人の祝宴の場面。みんな大好きディベルティスマン。今回の版は、スペイン団は悪魔ロットバルトの手下である悪のスペイン団バージョンでした。ディベルティスマンは盛り盛りなほど嬉しいタイプなのでポーランドがなかったのがちょっと寂しい。けど、悪のスペイン団は格好いいし(私は悪のスペイン団バージョン好きです)、ナポリもハンガリーもストレスなく見られる…って言うと、言い方が悪いんだけど、魅せるべきところをちゃんと魅せてくれる、楽しいディベルティスマンでした。せっかくのディベルティスマンが下手だったり振付がつまんなかったりするとイラっとしてしまうんですよね。ストレスなくいいぞいいぞーと思わせてくれるのは何気に貴重だと思います。そしてそういう貴重なディベルティスマンだと、本当に舞台全体の満足度も上がる。
ジークフリート王子の花嫁候補たちも可憐で可愛らしい踊りでした。もうちょっと長く踊ってくれてもいいのよと思うくらい。ジークフリートはオデットに夢中なので彼女たちには一片の興味も示さず。各国の姫君たちにそんな態度とって外交的に大丈夫か〜と心配になります。

そしてこの2幕の主役は悪の華オディール! というわけでフィリピエワ様のラストオディール登場!
オディールはオデットとは全く違う個性で、立ち姿一つとっても違うのに、ジークフリートはオデットだと思い込んでしまう。オディールが王子を誘惑する、その態度があまりに蠱惑的で、なんかもうそれに全て飲み込まれて理性的な物の考え方なんてできなくなってしまうというのも、なんかねー、分かる・笑
ジークフリートがオディールに近づこうとすれば割って入って、彼女と踊りたければ愛を誓えとロットバルトが煽るのもあって、遂にジークフリートはオディールに愛を誓ってしまう。
その瞬間、舞台は暗くなり、王子を心配してやって来たオデットの姿が浮かび上がる。
間違った相手に愛を誓ってしまったことに気づくジークフリート。
ざまあwwwwwwwwと大草原を生やして嘲笑するロットバルトとオディール。ここまであからさまな嘲笑をするバージョンってそんなに多くない気もする。とにかくロットバルトとオディールは闇に消え去り、失意のジークフリートもオデットを求めて王宮を飛び出していく。

私は白鳥の湖の中では、この王城パーティーのシーンが一番好きなんですよね〜。ディベルティスマンが沢山あるっていうのも好きな理由の一つだけど、やっぱりオディールの色っぽく、美しく、高慢な超絶テクニックを拝むのが楽しいっていうのが強い。
今回のフィリピエワ様はオディールの個性が非常に強く、分かりやすく、とても私好みで楽しかったです。グラン・フェッテは避け、ピケターンでしたが、オデットとしてこの後も踊りが沢山続くので仕方ないというか、グラン・フェッテ以上のその他の満足があったので、そんなにマイナスではありませんでした。
ま、オディール最大の見せ場の32回転はやっぱり見たかった…という思いもないわけではないですが。

さて、3幕。湖のほとりでオデットを待つ白鳥たちに、オデットはジークフリートの裏切りを告げる。おいジークフリートよかったな。ここがジゼルの世界だったらお前死ぬまで踊らされるぞ。といつも思うけど、白鳥たちは冷酷なウィリたちより優しく、一同は嘆き悲しむだけで「とりあえずジークフリート殺そう」と言う奴はいないのであった。
そんなこんなで命拾いしたジークフリートが駆け込んでくる。オデットに誠心誠意許しを乞うジークフリート。
私、この3幕のジークフリート、とても好きです。1幕ではなんかアホっぽさが残るジャリだった王子が恋を知って、自らの裏切りを悔いて立派な男性に成長したのを感じました。そしてこれはスハルコフさんの個性なのかな、とにかく自らの全てをオデットに捧げて許しを乞う、オデットのための自分である、というのが伝わってくるようでした。王子個人の見せ場となる踊りよりオデットを美しく見せるための踊りが多いんだけど、そのサポート自体が大変に心打つ彼の個性になっているような気がしました。もしかしたらフィリピエワという大スターのラスト・スワンに対する献身と、王子としてのオデットへの献身が重なって、私にそう見えたのかもしれません。
とにかく王子の心からの後悔がよく伝わってきて、悲しみながらもオデットが彼を許し、愛を誓い直すという流れが自然に感じられました。ここにミルタがいたら大変だぞお前。ってまた思うけど・笑
そしてこの3幕のオデットも、本当に素晴らしい踊りと演技でした。ポール・ド・ブラがとにかくすごい!! 本当に人間の腕? 白鳥の翼でなくて? と思う、複雑で滑らかで繊細な白鳥の動き。なんかねー、ラピュタは本当にあったんだ! 並みの、バレエで本当に白鳥になれるんだ! というような唯一無二のポール・ド・ブラでした。
これが見られただけでも本当にこの公演のチケットを取ってよかった。

そしてこのコフトゥン版の白鳥の湖は、愛によってロットバルトが倒され、二人は永遠に結ばれるというハッピーエンド版。ロットバルトは結構、立ち姿のすらっとした格好いいロットバルトでした。ある意味、不気味でおどろおどろしいロットバルトよりは御しやすい?かも?? と思わないでもないのですが、突然ロットバルトが負けるといつも拍子抜けしてしまうので、今回はどんなものかなとも思っていたのです。けど、そんなに違和感なしというか、ジークフリート頑張れ、お前の後悔はよく分かっている、だから頑張れーというモードに入っていたのもあって、命を懸けて巨悪に立ち向かうジークフリートが戦いの果てに遂に悪魔を倒した時にはほっとしました。
よかったねえオデットとジークフリート。

キエフ・バレエは、脇まで含めてある程度きちんと踊れる人が来日してくれて総じてレベルが高いと感じました。このちょっと前に見たミハイロフスキーは、正直ちょっといまいちなダンサーもメンバーに含まれていたので、踊りのレベルだけでいくとキエフ・バレエの方が上だなと感じました(でもミハイロフスキーの舞台もとっても楽しみました。ドゥアト監督が若手を大いに鍛えてくれることを期待します)。
ただ、予算の潤沢さはたぶんミハイロフスキーの方が…。衣装は両方とも可愛かったのですが、多分ミハイロフスキーの方がお金かかってそう。セットのゴージャスさは明らかに、ミハイロフスキーの方が上。という感じだったので。

キエフ・バレエは今年もまた来てくれるかな。なるべくお金をためて、いっぱい公演を見に行きたいと思いますぴかぴか(新しい)
いつかねえ、森の詩全幕を持ってきてほしいです。持ってきてくれなかったらウクライナに行くしか。

posted by 綾瀬 at 01:02| Comment(0) | 雑記・バレエ

2020年03月04日

1/12  新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」

バレエの感想、せめて1ヶ月遅れに早く追いつきたい。というわけでベルギーから帰国できるのか!? という記事の途中ですがバレエの感想がちょっと続きそうです。ゆーてまあ今日本にいるわけだけどさ。

というわけで、2020年2発目のバレエ鑑賞は、新国のニューイヤー・バレエ、ガラ公演です。順番にいきまーす。


共通
芸術監督:大原永子
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京交響楽団

セレナーデ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ステージング:パトリシア・ニアリー

キャスト:寺田亜沙子、柴山紗帆、細田千晶、井澤駿、中家正博、渡辺与布、飯野萌子、川口藍、中田実里、赤井綾乃、今村美由起、加藤朋子、菊地飛和、北村香菜恵、小村美沙、関晶帆、中島春菜、原田舞子、土方萌花、廣川みくり、山田歌子、横山柊子、宇賀大将、清水裕三郎、趙載範、浜崎恵二朗


抽象バレエってどうしても苦手で、すぐ眠たくなってしまう…というダメダメ子だったのですが、ある日急に、抽象バレエの難しいことは考えないでただ動きの美しさとか格好良さとかだけに「わーきれー! わーかっこいー!」とか思っていればよいのでは? と思い至り、そこから急にバランシン作品が好きになりました。どういうこっちゃ。もちろん、全部は見れてないけど…好きなのはジュエルズです。特にルビーが好きです。難しいことは、もうちょっと頭がよくなってから考えればいいかな、なんて…。来世に期待だね。
で、抽象バレエに対してのATフィールドがぐんと薄くなった状態での初めての抽象バレエが今回のセレナーデ。

いや〜、綺麗ですねえ。フォーメーションの類い稀なる美しさ。それから緊張感。たまらんわあ。
セレナーデって本当に緊張感がありますよね。神々しいような静謐。一瞬でも波紋が生じればこの美しさは台無しになってしまうのではないかというような。そんな中で、反逆? というわけじゃないですけど、ひとり、周囲と違う動きが発生する。その孤独と戸惑い。とてもどきどきします。それを契機に、それまでの一糸乱れぬ調和から外れた動きが次々発生して、そのひとりひとりにやっぱり何らかのドラマを感じてしまう。
温もりがないわけではないけど、何だかどんどん温度が下がっていくようで。でも、破局もあれば救いもあるような、だけど最後はやっぱりどこかひんやりとして終わる、みたいな。私が単にそう感じているというだけで、的外れかもしれませんが。
いずれにせよセレナーデ、また近いうちに見たいなあ。今書いていて本当にそう思う。
秘められたドラマが少しずつほのめかされているの、もっと何度も見て自分なりの解釈をしてみたい。
幻想的でありながら躍動感のある振付は、新国ダンサーの皆さんにもとても合っていたと思います。美しい舞台でした。


ライモンダよりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
改訂振付・演出:牧阿佐美
音楽:アレクサンドル・グラズノフ

ライモンダ:小野絢子
ジャン・ド・ブリエンヌ:福岡雄大


これはGPDDなのかと思ってたら、アダージョだけでした。なのであっという間に終わってしまうという。綺麗な踊りだけどほんとすぐ終わってしまったので、えっこれだけ!? という感想だけが後に残り、申し訳ないんですけどあまり印象に残りませんでした。綺麗だな〜という印象だけは残ったとも言えるかな。


海賊よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリーゴ

メドーラ:木村優里
アリ:速水渉悟


こちらの海賊は、ライモンダと違ってGPDD形式でした。なので男女とも見せ場たっぷり! そして元より、振付が華麗で技巧的というのもあって、会場も盛り上がりました。男性側、アリは大きなミスもなく、技も決まって爽快感がありました。こんなふうに宙を舞うように踊れたら楽しいだろうなーなんて、自分には当たり前ですができないので、想像だけしてみたり。
女性側、メドーラはなんか変なタイミングで肘や手首をくねくねさせるのがちょっと気になりましたが、もしそういう振付だったらごめんなさい。なんかすごく特徴的だったので。最大の見せ場のグラン・フェッテ、トリプルもガンガン入れて張り切って盛り上げてくれていたのに、変な手拍子する奴のせいで(?)失敗してしまったのが気の毒でした。変な手拍子マジでやめて…。ニューイヤー・ガラというお祭り演目にふさわしく盛り上がっていたのに、曲に合っていない変な手拍子本当に残念でした。でも手拍子する側からするとお祝儀みたいなものかもしれないので、そういう気持ちは勿論否定しませんが…、デモヤメテ。


DGV
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:マイケル・ナイマン
美術・衣装:ジャン=マルク・ピュイサン
照明:ジェニファー・ティプトン
振付指導:ジェイソン・ファウラー

第1区:本島美和、中家正博
第2区:小野絢子、木下嘉人
第3区:米沢唯、渡邊峻郁
第4区:寺田亜沙子、福岡雄大

コールド:
池田理沙子、木村優里、奥田花純、玉井るい、広瀬碧、益田裕子、朝枝尚子、廣田奈々、井澤諒、福田圭吾、速水渉悟、原健太、小柴富久修、中島駿野、中島瑞生、渡邊拓朗


コンテです。これすっごく良かったです! 是非また再演して欲しい!
疾走感のある作品です。それで、旅って、人生って、こういう感じだよな〜って、私が海外でひとりで特急に乗ってる時のような気分になりました(でも私ってTGV乗ったことあったっけ? 前回フランス行った時どうだったかな…。確認しないと分かんないけど、ケチだからTGV乗ったことない気がしますが・笑)。
何が旅ってこういう感じって、窓の向こうの背景がどんどん流れていくんです。手前ではソリストが自分たちを表現して踊ってる。その背景では、また別の人たちが自分たちの踊りをしている。交わらない、窓の向こうに通り過ぎていくだけかもしれない、自分ではない人たちの人生がどんどん現れては消えていく。自分たちは自分たちの人生を生きるけど、窓の向こうの人たちは、その人たち自身が主役である別の人生を生きている。旅をするということには少しの孤独はあるけれど、そうやって止まらずに人生は進んでいく。それはスリリングでやっぱり楽しい! って感じが、すごく旅だ! 人生だ! って感じで、照明やセットが格好いいのも素敵で、とにかく気に入りました。なんか読点ばっかで読みづらくてすみません。
最後、リフトのミスとかもありましたが、大きく、しなやかに、肉体がよく動いていて、一瞬も退屈しませんでした。非常に躍動感のある振付、そしてダンサーの演技でした。
あと太鼓が加わって音楽が最高潮に達していったところ、なんかちょっと和っぽくて面白かった。も、もしかして和太鼓?

と、今回はふたつのパ・ド・ドゥと、20世紀を代表する大振付家バランシンの名作、そしてバランシンやマクミランに見込まれた新進気鋭の振付家のウィールドンの意欲作を一堂に見ることができて、大変満足度の高い公演でした。ウィールドンさんは、きっと21世紀を代表する振付家になるでしょうねえ。ほんとによかった。ウィールドンさんの振付の冬物語、1幕がかなり好きで2幕がちょっとビミョーなんですが、そんなこと言わないで次回シネマでもいいから見る機会があったら2幕も真面目に見ようと思います。
そんで、こういった意欲溢れるコンテ(いやコンテ以外も)はどんどん日本に紹介して欲しいと思う。後でそのうち記事を書くと思うけど、このしばらく後で見に行ったアリーナ・コジョカル ドリームプロジェクトというコジョカル様の座長公演で、ナンシー・オスバルデストンさん振付・本人出演のエディットという新作が上演されたんだけど、これは時間自体は短い小品でしたが、内容はとても素晴らしかったです。もちろん、日本の振付家もどんどん作品を発表できる機会が増えるといいな。新国では、そういう意味では色々取り組みをしてくれているから、なるべく見に行ける公演は見に行きたいと思います。
あと意欲的な作品って言うと、NBAバレエ団が私はいつも気になっていて、ここも見に行く機会を増やしていきたい。

ちと話がずれましたが新国はダンサーのレベルが本当に高く、今回はちょっとミスも目立っちゃいましたが、それでも総じてストレスなく見れるのが素晴らしいです。なんだろ、ミスがあっても、それ以外にいいところがいっぱいあったから期待を下回らないって感じ? かな??
そして音楽も安定していいです。今回はイェーツ先生の指揮ですが、バクラン先生もイェーツ先生も安心と安定のバク&イェ(失礼ながら略してしまった)。前回のキエフ・バレエの記事で書くの忘れたけど、あの回のバクラン先生の指揮もとても素敵で、物語を盛り上げるための引くところ・持ち上げるところの塩梅がすごくよかったです〜。ちょっと演歌の世界? 日本人好みではないでしょうか!!



posted by 綾瀬 at 18:41| Comment(0) | 雑記・バレエ

2020年04月04日

2/8  マチネ アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト2020 Bプログラム

あーうー仕事忙しすぎて全然更新できてない。我ながら何ということ。このブログ見てくださってる方はありがとうございます!

というわけでコジョカル様のガラ公演の感想です。公演直前のリハーサルで座長のコジョカル様が怪我をされて演目・演者が急遽変更となるなどトラブルもありましたが、急遽ドイツはハンブルクからは菅井円加さん、シュツットガルトからはエリサ・バデネスさんが参加してくれて、とても素敵な演技を見せてくれました。アリーナ・ソーモワさんが来日しなかったのにはちょっとグダグダの気配を感じないでもなかったですが…。

しかしこのガラ公演、当初はチケット取るかすっごく迷いました。座長のコジョカル始め、フリーデマン・フォーゲル、セルゲイ・ポルーニンといった大スターの出演が予告されており、いやあこれは見たい〜という思いもあったものの、会場がBunkamuraオーチャードホールなんだもの…。この劇場は私の天敵です。高い金を出そうが、安い金しか出すまいが、どこも平等に見づらい。大っ嫌い。オーチャードホールの見やすい席があったら教えてほしい。本当に。
と、オーチャードホールに対するヘイトが隠せないのですが、まあガラ公演だし端が見切れてもいっか〜と思い、3階サイド席のステージ寄り内側の席を取りました。まあ見づらいけど、ガラならぎりぎり許容範囲かな。見切れもちょっとといえばちょっとだし…。でも全幕物だったらやっぱこの席では見たくないな。見づらいんじゃ。見づらいんじゃ。
あと、今回3階席に初めて上がったのですが、サイドじゃなくて中央の席の一列目、の前にある謎のスペースは何なんだぜ? あれのせいで一列目の人絶対手すり邪魔じゃん? 行ってないけど2階席も多分同じだよね。絶対中央の席取らんとこ。と思いました。ほんとなんだあれ。緊急時の避難誘導路…としても無能な配置では?

結論として、やっぱりオーチャードホールで見やすい席は今回も見つかりませんでした。ガラならまあサイド内側ならギリ許容範囲…手すり邪魔だけど…端も(サイドだから当たり前だけど)見切れるけど…って感じ。
5月だったかな? のKバレエの海賊見たいと思ったけど、オーチャードホールだから行かないっス。

あ、そんなに嫌いなオーチャードホールなのに結局どうしてチケットを取ったかというと、推しのキム・キミンさんの出演が決まったからです。これは見なければ。オーチャードホールということも、苦渋の決断で、だ、妥協していい!!


アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト
第1部

伝説
振付:ジョン・クランコ
音楽:ヘンリク・ヴィエニャフスキ
キャスト:エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル

シュツットガルト組の演技。解説に、
>難易度の高い流麗なリフトを多用して詩情あふれる世界を構築し
と記載があったのですが、本当にリフトが流麗で美しくて、衣装をたなびかせてステージ上を縦横に駆けるという振付もあって、「流れ」を強く意識する作品でした。
停滞することなく美しいものが次々と生み出されていって、伝説の名にふさわしい威風堂々たるリフトなど、神々しさを感じるくらいでした。リフトされてフォーゲルの上に立つバデネスは本当に伝説的に格好良かったです。格調高く美しく、素晴らしい作品でした。


ヴァスラフより
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
キャスト:菅井円加

面白いコンテ。ニジンスキーの未完の作品をノイマイヤーがバレエ化した1幕物の作品からの抜粋のよう。もっと長く見たかった〜。
ニジンスキーらしい大地礼賛を感じさせるような動き、重々しさと神秘性があって素敵でした。いつか抜粋でなく全部見てみたいです。


ディアナとアクテオン
振付:アグリッピーナ・ワガノワ
音楽:チェーザレ・プーニ
キャスト:ナンシー・オスバルデストン、オシール・グオーネ

古典です。エスメラルダのディベルティスマンから。
演者のオスバルデストン、グオーネ、お二人を不勉強にして今回初めて知ったのですが、お二人とも素敵なダンサーでした。オスバルデストンはポワントで片足立ちになり両手を挙げて静止するという難技を見せ、グオーネも素早くブレない回転に高い跳躍などクラシックバレエらしい技量を発揮して、気迫溢れる演技で大いに会場を沸き立たせていました。お二人ともやったるでオラアッって感じで、好感が持てました。特にグオーネは舞台と体を大きく使ってダイナミックな演技を見せており、この1演目だけなんて勿体ない〜、コンテも見たい〜と思いました。ミュンヘンバレエ団のプリンシパルとのことなので、いつかドイツに行ったらミュンヘンバレエ団も見に行きたいな〜って思いました。
ドイツは…大変だね、ハンブルク、シュツットガルト、ベルリン、ミュンヘン…東西南北……。行くところいっぱい!


ABC
振付:エリック・ゴーティエ
音楽:フィリップ・カニヒト
キャスト:ヨハン・コボー

ちょっとコントっぽく、大喜利っぽい。と、当日の私のツイートに書いてありました。ABC、アルファベットに合わせて天の声(ナレーション)にあれやれこれやれ言われて、舞台上のコボーがそれを一生懸命演技するというコミカルな作品。と、コンセプト自体にギャグっぽいっていうか滑稽みがあるんだけど、パのひとつひとつの美しさや格好良さは健在で、すごく楽しんで観ておりました。
天の声がさ〜、結構無茶言うのよね・笑 言われる方は大変・笑笑
私は…コボー様のブラックスワン面白かったです。素晴らしいポールドブラ! でもわざと大仰にやってるでしょって感じで面白い! という。
ほんと休む間もなく次から次へと言われて、最後の方は普通にヴァリエーションが入ってくるから鬼のように踊らされておりました。面白かったです。


モノ・リサ
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト、作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ
キャスト:エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル

今回、どの演目が一番好きだったかっていうと、この「モノ・リサ」かこの後に演じられた「エディット」のどちらかかなって思っています。
アクロバティックでダイナミックで、かつ繊細というか、1ミリや0.1秒のズレが即演技の失敗に繋がるような、精密さを求められるスリリングな作品でした。
男女1対のダンサーが自らの肉体を使って、剣と剣の刃先がぶつかり合うように鋭く応酬を繰り広げます。手足の動きだけでも複雑なのにもちろん手足だけでなく体全体が大きく目まぐるしく動かされて、二人の体の位置も絶え間なく入れ替わり、次々に様々なシルエットが作り上げられて、一瞬毎にそれが変化していく、とてつもなく面白い振付でした。これを表現するのにどれほどの技量が必要か、見ているだけで息を飲んでダイエットになりそう(意味不明ですみません)。
そこまで上演時間が短い物でもなかったのですが、もっとずっと見ていたいと思っているうちに終わって、演じられている時間が何だか一瞬のように感じました。
凄まじい運動量と熱量でお気に入りの作品です。バデネスとフォーゲルの、卓抜し、磨き抜かれた技量に心底うっとりしてしまいました。


エディット
振付:ナンシー・オスバルデストン
音楽:エディット・ピアフ
キャスト:ナンシー・オスバルデストン

こちら、本人振付本人上演、で、世界初演だったのですがすごくお気に入りの作品ですぴかぴか(新しい)
こんな素敵な作品を日本で世界初演してくれるなんて本当に光栄だ。ありがとうありがとう…! そんでもってこういう優れた作品がどんどん紹介される国であってほしいな〜って思いました。
で、こちらの「エディット」。エディット・ピアフの「水に流して」に乗せて演じられました。このガラでは唯一のボーカル入りですね。「水に流して」の原題は、「私は決して後悔しない」というものだそうです。その原題の通り、様々な苦難に揉まれて心も体も引き絞られるようになりながら身を捩って踊る、その最中には苦しげに、つらそうにも見えるのですが、終盤に近付くにつれてどんどん清澄な境地が表れてくる踊りでした。
つらいことも悲しいことも沢山あったけれどこれが私の人生、その時にできる最大限のことをしてきた、悪くはなかった…という、こういう人生が送れたのであればそれはそれでよかったのだろう、人生の終わり方として、ある種の理想の一つであろう、という印象を受けました。
諦観ではなく悟りというか、切ないながらも爽やかさが残る作品で、色々なダンサーが色々なアプローチをできる作品でもあると思います。とてもよかったです。


海賊
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリゴ
キャスト:菅井円加、キム・キミン

ガラのお馴染み演目、海賊のアリとメドーラのGPDD。私はキム・キミン様推しなんですが、今回1年半ぶり?くらいに生で見て、すごくびっくりしました。
めっちゃ上手くなってない!!!!????
いや、元から超上手いですよ、当たり前だけど。マリインスキーのプリンシパルだし。だけど、ちょっと膝とか肘とか爪先とか、特に膝とか、気になることがあったんですよね。でも今回、全然、本当に1回も気にならない! どころか、腕も足も綺麗だなって思いました。すごい、すごいよー見る度に美しくなっていくキミン君!…。てか、マリインスキーらしい繊細さ、優美さも更に磨きがかかって、唯一無二の跳躍も健在で、本当に怖いものなしの素晴らしいダンサーexclamation×2 しかもまだ若いしexclamation×2 これからもマリインスキーで研鑽を積み、更なる高みを目指してくだされ…。
で、つい押しのキミン君のことばかりテンション高く語ってしまいましたが、菅井円加さん。すごいダンサーですね。軽やかで優美なメドーラ、可愛い! と思っているうちに、女性バレリーナ最大級の見せ場のグラン・フェッテ。これも軽やかに優美に回っていらしたんだけど、1回転の終盤でスピードが緩やかになるんですよね。一瞬、おバカな私は回り切れない…?って思っちゃったんですがそうじゃなくて、そこからまたスピードアップしてくるんって回るんですよねー(長音記号1)exclamation×2
これ、すごくないですか!? 回転スピードを自由自在に操れるんですか!?
キミン君と菅井さんのGPDDは、異なるバレエ団所属ながら共通する優美さや軽やかさがあって、相性が良いように感じました。楽しい、素敵な海賊でした。また見たいぞ!


第2部
マルグリットとアルマン
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト

マルグリット:アリーナ・コジョカル
アルマン:セルゲイ・ポルーニン
アルマンの父:ヨハン・コボー
公爵:木村和夫
東京バレエ団 ほか


今回のガラ公演、Bプログラムを選んだのはこの「マルグリットとアルマン」を見たかったからなんですね〜。
で、どうだったかというと、ズコーって感じでした。
コジョカルが怪我の影響で省エネ気味なのはしょうがないとしても、ポルーニン全然踊れてないんだけど大丈夫…? って感じでした。重い重い。動きにキレがない。つまんなくて途中ちょっとウトウトしてしまいました。
ポルーニンの素晴らしい演技の動画って検索すればいくらでも出てくるので、ポルーニン出演の舞台を見に来る人って、そのレベルを期待してしまうと思います。私もそうです。で、これだったので、ほんと、申し訳ないですけど拍子抜けでした。これがポルーニンでなくて無名の新人さんとかだったら、すごいと思いますよ。でもポルーニンに期待していたレベルにははるかに届かず…って感じです。
で、このポルーニン演じるアルマンは、見たことのないタイプのアルマンでした。荒々しく、激しく、DV男だったので、こんなん家族のことがなくても病気じゃなくてもマルグリットは別れるべきと思います・笑
ただその荒々しさ、激しさはマルグリットへの愛ゆえで、彼女への愛が裏切られたと思ったからこその爆発的な感情の発露だというのは分かるのですが、それってやっぱり彼女を全然見ていなくて、自分の思いしか見えていないからですよね〜。若くて視野が狭いっていうか。まだいい男じゃないなって感じ。その役作り自体は、稀に見る分には結構悪くないと思いました(いつもこういうアルマンが見たいかっていうと、それは別)。劇中、一番アルマンの感情が昂るシーンがあって、札束をマルグリットの顔に思い切り叩き付けたんですよね。そこはポルーニン、コジョカル双方の演技も素晴らしく、私は良いなと思いました。マルグリットの愕然とした様子は本当に可哀想でしたし、アルマンはひどい奴ではあるけれど、彼には彼の知らない事情、彼の思いがあって、すれ違う二人がやっぱり可哀想で、アルマンの迫力にはこちらも打ち据えられたような心地がしました。ま、また見たいタイプのアルマンかどうかは別として…。
しかし、どんなに演技が良くても踊りがいまいちだとそちらの印象の方が強く残ってしまって何だかな〜な第2幕でした。当日の自分のTwitterを見たら、ポルーニンがこんなに踊れないならフォーゲルと代わってくれてよかったのにということが書いてあって、ひどい言い草と思いつつ、まあ我ながら本心だなと思います。


posted by 綾瀬 at 18:10| Comment(0) | 雑記・バレエ

2020年04月25日

2/15  マチネ NBAバレエ団「ホラーナイト」

NBAバレエ団による公演を見てきました。世界初演となる「狼男」と、ミルウォーキーバレエ団の芸術監督であるマイケル・ピンク振付の「ドラキュラ」より第一幕のダブルビルです。
NBAバレエ団はエンタメ性の高さにも注力されていて(と私は思っているのですが)、バレエ初心者でも楽しみやすい演目を多く上演されており、なるべく見る回数を増やしたいなーと思っているバレエ団です。今回、ホラーというテーマにも興味をそそられチケットを取りました。

狼男
芸術監督:久保紘一
振付:宝満直也
キャスト
a man:森田維央
a girl:竹田仁美

ミステリアスでスリリングな抽象バレエでした。これはまた見たいな〜、そして色んな人の解釈を聞きたいな〜と思います。
最初、舞台は真っ暗で何も見えません。自分自身がその暗闇の中にいるような、緊張でドキドキする中で物語が始まります。
この作品は最初から最後までずっと、破局の気配に満ちているような気がしました。
狼男、あるいは狼女の身に降りかかる孤独で悲劇的な運命が普遍化されており、誰しにも起こり得る悲劇として悲愴なエピソードが繰り広げられます。そしてそんなのは関係ないと思っている、どころか想像もし得ない圧倒的大多数の人々の姿の、マイノリティを指弾し嘲笑う姿は醜悪で、その醜悪さに報いるように彼らにも悲劇が訪れます。その悲劇後の姿からは、「狼男(狼女)の悲劇的な宿命を想像もしないマジョリティ」である彼らもひとりひとり自分が主役の人生を生きていた一人の人間で、こんなふうに死んでしまっていいわけではない、もっと生きていたかったのだ、というメッセージが発せられているような気がしました。果たして、私自身はどちらでしょうね? マイノリティの狼男(狼女)か、マジョリティの一般人か…。
後半に差し掛かった辺りで、ドレス姿の男性が登場します。彼は何のメタファーなのか。最初、「悲劇的な運命」のメタファーなのかと思いました。次に「死」のメタファーかと。最後には、狼男を悲劇から守ろうとする「守護的な何か」かなあ、などと。全然違ってたらすみません。
とにもかくにも、彼が狼男から少女を引き離し、舞台から退場します。これによって狼男は永遠に少女を失ってしまうのかとも思ったのですが、少女はそれからしばらくして再び舞台へ登場。今度は狼男を糾弾するようなマイムを見せます。これは裏切りなのか? 愛は終わってしまったのか? やはり狼男と少女では一緒にはなれない? いずれにせよ冒頭から張り詰めていた破局への予感がここでついに結実してしまったような気がしました。
でも物語は一筋縄では終わらず、狼男と少女は緊迫感に満ちながらも再び心を通い合わせようとしていくようで、そこから急転直下、クライマックスに向けて再び破局の予感が満ち満ちていく――という感じ。
かなり抽象的な作品なので、人によって解釈はバラバラかと思います。上記はあくまで私の解釈ですが、また見たら感想も変わるかもね。
踊りはコンテンポラリー寄りで、大地の重みを活用した動きが多いです。地を這うような、狼男がテーマだけに獣を思わせる動きが沢山あり、面白かったです。
上述の通り、ミステリアスでスリリングで、先はどうなるのかとドキドキしながら見ていました。いい感じに不気味な作品で、再演してほしい。
ちょっと言うとすると、マジョリティがマイノリティいじりをするところが少し長かったかなー? あそこはもう少しサクッと進んでもよいかもですね。執拗にやるからこそ普遍化できるというのもあるのですが。

ドラキュラ 第一幕
芸術監督:久保紘一
振付:マイケル・ピンク
キャスト
ドラキュラ:平野亮一
ジョナサン・ハーカー:宮内浩之
ミーナ:峰岸千晶
ヴァン・ヘルシング:三船元維
レンフィールド:河野崇仁
3人の女バンパイア:浅井杏里、佐藤圭、関口祐美


ダブルビルの2演目目。ドラキュラ役として何と、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルである平野亮一さんが客演されています(ダブルキャストで、ソワレは狼男の振付の宝満直也さんがドラキュラ役)。以前シネマで見た冬物語の平野亮一さんの素晴らしい怪演が印象深く、その平野さんのドラキュラを是非見たい! と思い、この日を心待ちにしていました。
原作は勿論、ブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」です。といっても実は私は原作を読んだことはなかったので、事前にさらっとネットであらすじをチェックしていきました。まあ、大体知っていた通りではありますが…。
セット、衣装、不気味な色合いの照明、これらとても手が込んでいてよかったですexclamation 特にセットはヴィクトリアンなゴシックホラー感がよく出ている、ゴージャスで素敵なセットでした。列車に乗り込みくるくる回って時間と距離の過ぎるのを表現するのもよかったです。
そして物語は、おいおいここで終わりかよ〜〜〜続きめっちゃ見たいわ!!といういいところで幕。今回は1幕だけの上演なのだ…。全幕は8月に公演予定で、勿論チケット申し込んじゃったよね(この記事を書いている時点でもう届いていますわーい(嬉しい顔))。

ドラキュラ役の平野さん、言うまでもないですがめっちゃよかった〜〜〜〜!!! カーテンコールでもドラキュラの役作りをしたままで、すごく不気味な迫力。弁護士のジョナサン・ハーカー役の宮内さんと繰り広げる男性同士のパ・ド・ドゥは淫靡で力強くド迫力で、見ている側もハラハラして息を飲んでしまいます。ジョナサンに対するドラキュラの執着、逃げたくても圧倒的な力の前に逃げられずもがくジョナサン、運動量もすさまじく、ダイナミックなパ・ド・ドゥでした。男性同士のパ・ド・ドゥいいですね〜。これからの時代は男女、男男、女女のパ・ド・ドゥもよいのではないでしょうか。
順番が前後しましたが、民族舞踏のシーンも迫力があってよかったですね。ジョナサンがドラキュラの本拠地に到着すると、地元住民たちが狂気的な踊りを踊っているのです。コールドのキレもよく、ゴシックホラー的な狂乱がよく表れていたと思います。
あと私は3人の女吸血鬼たちがすごくよかったるんるん キャスト表を見たら上手い方ばかりなので、この満足度もさもありなむって感じかもしれませんが。淫靡で美しい女の形をしているのにどー見てもまともな人間じゃない、素晴らしく不気味で気持ち悪いでも美しい女吸血鬼たちなのでした。こんなのに(失礼)絡みつかれるジョナサンおつ…って感じ!

このドラキュラは(まだ1幕しか見てませんけど)、場面の繰り返しが多用される渦巻のような構造の構成なのですが、話は停滞することなく目まぐるしく進み退屈する暇がありません。引き算がとても行き届いているな〜って思いました。ほんと面白かった!
8月の全幕が待ち遠しいです。圧倒的強者であり執拗に執着してくるドラキュラに、我らがジョナサン・ハーカー(とヘルシング教授)はいかに立ち向かうのかexclamation&question
そして不気味で凄まじい存在感を放つ平野ドラキュラは2幕以降どう演じられるのか。
とにもかくにも楽しみです! ホラーナイト、見れてよかったグッド(上向き矢印)


posted by 綾瀬 at 15:13| Comment(0) | 雑記・バレエ

2020年05月23日

2/22 マチネ 新国立劇場バレエ団「マノン」

珠玉のマノンでした。


芸術監督:大原永子
音楽:ジュール・マスネ
編曲:マーティン・イェーツ
振付:ケネス・マクミラン
美術・衣装:ピーター・ファーマー
照明:沢田祐二
監修:デボラ・マクミラン
ステージング:カール・バーネット、パトリシア・ルアンヌ・ヤーン

指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京交響楽団

マノン:米沢唯
デ・グリュー:ワディム・ムンタギロフ
レスコー:木下嘉人
ムッシューGM:中家正博
レスコーの愛人:木村優里
娼家のマダム:本島美和
物乞いのリーダー:福田圭吾
看守:貝川鐡夫


ワディム・ムンタギロフの客演が決まって、すごく楽しみにしていた公演でした。久々に奮発してS席わーい(嬉しい顔)

その期待に違わぬ素晴らしいマノンでした。上演後、1階席は納得のスタンディングオベーション。
無垢な米沢マノンのどうしようもない死、力強さもなくただ一途な、それ故にマノンを破滅させるムンタギロフのデ・グリュー…。また何度でも見たいと思う舞台でした。

米沢唯さん演じるマノンは、本当に無垢でピュアなマノンでした。無垢であるがゆえに善悪もない、ただ彼女がその時その時で素敵だと思ったものを選んでいく。その瞬間瞬間の結果として、デ・グリューの手を取りながらGMの宝石や毛皮に心を惹かれ高級娼婦になって、でも追いすがるデ・グリューを拒絶することもできずに両方のいいとこどりをしようと浅はかな企みをし、逮捕されて流刑地へ送られて看守に弄ばれて、ルイジアナの沼地に彷徨い死ぬしかなくなってしまう…。
無垢すぎて、故に道徳からもかけ離れたモラルの欠如した存在であるマノン。でも、彼女は自分が選択するべき場面では自分自身で選択しているな〜っていうのは感じました(例え兄レスコーのそそのかしがあったとしても)。デ・グリューの手を取ったのもマノン、彼を裏切ってムッシューGMの愛人になったのもマノン、デ・グリューを捨てきれず彼と行く道を選んだのもマノン、ルイジアナの沼地に逃げることを選んだのもマノン……。
自分自身の人生を自分自身で選んでいくというのは20世紀以降の女性の描き方だと思います。たとえ結果が破滅だとしても。
自我が乏しく状況に流されていくだけのように見えながら、マノンって決してそうじゃないのがとても魅力的なキャラクターだと思います。米沢さんのマノンは本当にどこまでもピュアで、だから破滅していくしかないというのが心底納得いく感じで、素晴らしいマノンでした。1幕、デ・グリューと寝室でイチャイチャするマノンは本当に幸せそうで可愛いし、2幕、男たちに傅かれて娼館の女王然と振る舞うマノンは良い意味で下品というかもうとにかく自信あふれる高級娼婦って感じで、一方でデ・グリューを捨てきれずに揺れるところに可憐さもあるし、3幕、流刑地の寄る辺なく頼りないマノンは守ってあげたくなるような魅力に溢れていて、とにかく素晴らしかった。沼地のパ・ド・ドゥでは、マノンは生きることを放棄しているのでなく、生きようとしているけれどどうしてももう生きることができないという命の抜け出していく弱々しさを感じて、まあマノンだから自業自得ではあるんだけど可哀想で応援したくなりました。デ・グリューと生きたかったよね、マノン…。
ワディム・ムンタギロフのデ・グリューは素晴らしい当たり役でした。長身、長い手足、ノーブルな佇まい、とバレエのヒーロー役にはぴったりで、とにかく華やか。バレエのデ・グリューは学生という設定で、金持ちのボンボンでもないし王子でもないし剣に秀でた騎士でもない。何にもない。最初から、マノンへの愛しか持っていない。それで、その愛を胸に身を引くということができないんですよね。愛人という道が道徳的に見て悪の道、というのもあるけど、マノンを金持ちの愛人としての社会的成功者の座から引きずり落としてでも自分の愛を受け入れさせたかった。それって本当に彼女への愛? 自分自身を愛しているだけでは? と、私は思わないでもないのですが、その一途さがデ・グリューの魅力なのは間違いないと思います。
ムンタギロフ演じるデ・グリューは、一目見た瞬間からマノンに熱烈な恋をしてしまって、どうしたってその火を鎮めることができない。みっともなく追いすがって情けない姿を晒してでも彼女を取り戻したい。それでレスコーの脅しもあり、彼女を取り戻したい一心でろくでもない企みに加担してしまう…。彼も可愛そうだけど、マノンを破滅に追い込んだのは間違いなく彼自身ですよね。デ・グリューの愛がもう一段高いところにあったら同じ結末にはならないはずです。彼がマノンを自分のものにしておきたいという欲望を抑えることができていたら。まあしょうがない。人間の感情なんて何でもかんでも理性的に処理できるものではないでしょうから。
米沢さんとムンタギロフさんのパートナーシップは本当に素晴らしく、マノンとデ・グリューの間に、この二人でなければこうならないという化学反応のような関係が生まれているようでした。

長くなってしまったのであとちょっと駆け足で。
レスコーの木下さんは単体で見るとよかったのですが、デ・グリューと絡むと体格差もあり、デ・グリューが負けてしまうのがちょっと不自然に感じる……。あと酔っ払いヴァリエーションンのところは持ち前の(と思われる)端正さが出ていたので、もっと崩して酔っ払い度が高くてもよいかも? と思いました。レスコーの荒んだ感じはよかったです。
レスコー愛人の木村さん。木村さんはニューイヤー・バレエの時の海賊のメドーラが正直私的にイマイチだったので、もしかしたらあんまり好きなタイプのダンサーではないのかなと思っていたのですが、レスコー愛人すごく良かったですよ。純クラ演目よりドラマティック演目の方が映える方なのかもしれないなあと思いました。艶やかで華があり、レスコーを好きな気持ちや、横暴なレスコーに「ちょっと〜」と思っているところなんかもよく伝わって来て、演技も踊りもよかったです。
あと、ムッシューGM役の中家さんと看守役の貝川さん。これらの役は役が役なんですが、おふたりとも体格が良いのもあってか、立っているだけで目を引き寄せられる華のある存在感でした。

はあ、マノンよかったなあ〜。見てから1ヶ月以上経ってしまいましたが(どころか3ヶ月…)、何度も反芻してしまう。マノンのお気に入りシーンは1幕の寝室のパ・ド・ドゥと3幕の沼地のパ・ド・ドゥ、あと瀕死のマノンの前に彼女の人生にかかわった人々の幻覚が走馬灯のように入れ代わり立ち代わり現れるというあのシーンなのですが、そのお気に入りシーンのどれもこれもが素晴らしい出来で、本当に大満足でした。
マノン、近いうちにまたやってほしいなぴかぴか(新しい)



posted by 綾瀬 at 15:29| Comment(0) | 雑記・バレエ