旅行の話でなく、バレエ鑑賞の話です。
私は幼稚園児の時にあまりのスキップのできなさにバレエ教室をクビになった実力の持ち主です。
そんな日本有数の実力の持ち主でありまして、バレエ教室をクビになってからこれといってバレエに深い関わりもなかったのですが、趣味として最近ちょこちょこバレエ鑑賞をするようになりましたので、備忘録も兼ねて思ったことなどをちまちま書いていこうかと。
あ、でも幼稚園児でバレエ教室をクビになる実力の持ち主なので、特にこれと言って知識もなくセンスもなくバレエ用語やバレエの技術も全然知らないし、間違ったこととか色々書いてると思いますがご容赦を。
で。
3月10日(土)日本バレエ協会による「ライモンダ」全幕を見てきました。
新振付:エリダール・アリーエフ
原振付:マリウス・プティパ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
指揮:オレクセイ・バクラン
演奏:ジャパン・バレエ・オーケストラ
配役
ライモンダ:下村由理恵
ジャン・ド・ブリエンヌ:橋本直樹
アブドゥルラクマン:三木雄馬
特定のカンパニーでなく、オーディション型のダンサー参加型公演。トリプルキャストで、私が見に行ったのは初演の回です。
あらすじはというと、十字軍華やかなりし頃の中世フランスが舞台。でもなぜか王様はフランス王でなくハンガリー王にフィーチャー。
それはさておきハンガリーの伯爵夫人の姪であるフランス人の貴族令嬢、ライモンダが主人公。ライモンダにはジャン・ド・ブリエンヌという許嫁がいます。このジャン・ド・ブリエンヌは十字軍の騎士です。
普通、第一幕の時点でジャンは十字軍に出征中なのですが、今回の上演では第一幕、ライモンダの名の祝いの宴の際にライモンダの元へ出征の挨拶に駆け付け、愛を誓うというシナリオでした。
んで、愛を誓ったジャンはハンガリー王に従っていざ十字軍に出発。あ、でもジャンはフランス人だそーです。まあ名前からしてそうだな。
ジャンが出発し、名の祝いの宴も果てた後、ライモンダはハープをかき鳴らしつつ寝入ってしまいます。
そしてライモンダが夢の中で見た世界が「夢の場」と言われる有名な場面で、夢の中では精霊たちが幻想的な踊りを舞い、ライモンダもここで愛するジャンと再会(夢の中だけど)。しっとりを愛を歌い上げます。
が、ふと気が付くとジャンは消え、見知らぬサラセン人がライモンダに迫ります。何こいつと思うライモンダ。
多くの版ではこちらの夢の場では白い貴婦人という、ライモンダの守護精的な精霊が登場するのですが、今回のシナリオではなし。
知らないサラセン人はライモンダへ愛を訴えます。ビビるライモンダ。ふと気が付くと目が覚めて、今のは夢だったのだと知るのです。
ここまでが第一幕。
第二幕。
ライモンダのおばさんの伯爵夫人の城でパーティが開かれます。そこでは宮廷人たちやライモンダの友人たち、その他招待された人々が楽しく踊ったりして盛り上がっていますが、何と招待客の中にライモンダが夢で出会った見知らぬサラセン人がいるではありませんか!
彼はサラセン人の首領、アブドゥルラクマン。彼自身は自分がライモンダの夢の中に登場したことなど知りませんが、一目見るなりライモンダに夢中になってしまいます。
互いに踊りで相手をもてなしつつ、ライモンダに求愛するアブドゥルラクマン。引くライモンダ。もしかしたら一瞬彼に心ひかれそうになった瞬間もあったかもしれないけど、私の目からは終始ドン引いていたように見えた。
靡かないライモンダに業を煮やしたアブドゥルラクマンは、遂に手下たちに命じてライモンダを拉致することに!
そこへ間一髪、駆けつけてきたのが婚約者のジャン・ド・ブリエンヌとハンガリー王一行。十字軍終わるの早いな。ちゃんと聖地まで行ったのか? 途中で行くのやめてない? と思う私であった(ここあらすじじゃなく感想)。
それはさておきジャンとアブドゥルラクマンは激しく対立し、ハンガリー王の取り成しで決闘によって決着をつけることに。
何度か剣がぶつかり合った後、ジャンは遂にアブドゥルラクマンを打ち倒します。斬られたアブドゥルラクマンは瀕死の重傷を負い、倒れ込みながらもライモンダの元へ這って近寄り、懸命に手を伸ばしますがその手はライモンダへは届かないのでした。
哀れアブドゥルラクマンは、絶命。と思いきや、パンフレットのあらすじによれば、アブドゥルラクマンは重傷を負う、というところまでしか明記されていませんでした。でも多くの版ではアブドゥルラクマンは死んじゃうんですが。今回は、その辺りはぼやかしたあらすじになっているみたいです。しかし私の目からは、舞台上のアブドゥルラクマンは確実に死んでたように見えたのでありました。合掌。
このシーンのライモンダは、アブドゥルラクマンを忌避するというよりは、思いがけないことに戸惑い、困惑し、恐れおののいているように見えました。
ここまでが第二幕。
第三幕はハンガリー王やおばさんの伯爵夫人の祝福の元に行われるライモンダとジャンの結婚式の場面で幕。
と、まあ、一人の美しい少女をめぐって二人の男が相争うという三角関係のお話です。
第一幕、登場した時は使者が持っている巻物をとりあげてはしゃぎまわるような天真爛漫な少女だったライモンダが、苦しい恋に巻き込まれ、人間として成長し、第三幕、結婚式の場面では高雅な貴婦人としての気品を漂わせるようになるまでの物語でもあります。
ライモンダがアブドゥルラクマン(多くの版ではアブデラクマンと呼ばれていると思いますが、パンフレットによれば元々は「アブドゥルラクマン」だったそう)に少しでも心を引かれたのか? あるいはジャン一辺倒で、アブドゥルラクマンに対しては拒絶しかしなかったのか? は、演出によっていろいろと解釈があるそうです。
私は今回の演出では、ライモンダはジャン一筋でアブドゥルラクマンに対しては断固NO! というふうに見えましたが、他の方の感想はどうかなあ。
アブドゥルラクマンについても、格好いいところのあるサラセン人の騎士として描くか、悪役一辺倒として描くか、色々だと思いますが、今回のアブドゥルラクマンはちょっとコミカルでちょっとキモい悪役としての面が大いに強調されていたように思います。
ライモンダに求愛するダンス、セクハラストーカーぽくて、キモ面白かった。ごめんねアブドゥルラクマン。
アブドゥルラクマン役の三木雄馬さんの熱演のおかげだね! アブドゥルラクマンのようなキャラクテール(特異なキャラクターにより、演技力と技術力の両方が問われる特徴的な役柄。白鳥の湖のロットバルトとか。眠りのカラボスとか)は面白くて大好き。いいキャラだったよ!
ダンスについても、アブドゥルラクマン率いるサラセン人一行のダンスは迫力があってよかったです。躍動感があって、激しくて、サラセン人の情熱や猛々しさがよく伝わってくるようでした。
男女が対になってぐるぐる円を描いているところを、男の人と女の人の間を逆流して駆け抜けるアブドゥルラクマンの振付(ごめん意味わかんないと思うけど、そういうシーンがあるのだ)、すごかったなあ。また見たいなあ。
三木雄馬さんの体の動かし方がすごくよかったので、もっとソロで長く見たかったぞ。タイトルロールのライモンダはさすが! というほどにヴァリエーションがいっぱいで、ほんと踊りっぱなし! って感じだったのですが(姫も大変だなと思う)、反面男子(ジャンやアブドゥルラクマン)の踊りは少な目だったので、もう少し見たかったかも。
あと、サラセン人の踊りのソリストの渡辺幸さんと奥田慎也さんは動きがキレッキレで、見ていて、すげえ、目が追い付かないや、って感じで、ちょーよかった。
色々な所属母体からダンサーが集まっての公演だったけど、コール・ドは概ねどこもすごく揃っていて、素敵で、見ていて気分が良かったです。普段から同じカンパニーで練習している者同士じゃないのに。日本のコール・ドは本当にレベルが高いな。
ただ、第三幕のグラン・パ・クラシックの時、一組リフトのぐらついたカップルがあって、ひやっとしたものの、持ちこたえてくれてよかった。
そうそう、ライモンダは主役カップルや友人たちや宮廷人たちのリフトがいっぱいで、本当に華やかで見ていて楽しかったですね。
主人公のライモンダは、私は第一幕中盤のヴェールのヴァリエーションがよかったな。しっとりしていて情緒たっぷりで、ライモンダ頑張れ〜って思った。
あとは第三幕、結婚式の場面でのライモンダのヴァリエーション。結婚式という一世一代の舞台なのですが、音楽が寂しいのだ。華やかなファンファーレとかじゃなく、ピアノソロで始まる悲し気な踊りなのです。ライモンダの表情はニッコニコではなく、打ち沈んだような悲しみと一人の貴婦人に成長した気品が綯い交ぜになったような感じです。
やっぱ自分のせいで一人死んじゃった(私の目には)んだから愛するジャンとの結婚式とはいえニッコニコにはなれないよね。そりゃそうだ。
これで、「死んだ」って明言すると後味悪いから、今回のパンフレットでは名言されていないのかもしれませんね。
3時間ほどの舞台でした。たっぷり楽しませてもらいました。
正直言うと、もうちょっと頑張ってほしい〜ってところがないわけではないのですが、私は相当楽しんだので満足です。
衣装やセットなどの美術も大変豪華で美しく、目の保養でした。衣装、ほんとすごかったぞー。煌びやかでゴージャスで、上品でもあった。衣装って、近くで見ると安っぽく感じることもあったりするけど、今回の衣装にはそんなふうに感じる余地は欠片もなかった。ザ・ゴージャス。ザ・貴族。圧倒的なエレガンス。夢の場のセットもほんとに素敵だったしさ〜。この衣装やセットを使わないのは勿体ないので、是非どこかで公演してほしいです。
あと、私は今回の指揮者、バクラン先生、だいぶ好きだな・笑
熱血タイプの指揮者の方と思われますが、バレエ・舞台との調和がよくとれていて、美しい音色でずーっと場を満たしてくれていました。一瞬、金管(私の目は節穴ですが、耳も節穴なので、どの楽器かは自信がないため伏せます)が詰まりかけた瞬間があったけど、すぐリカバリされて、気になったのは1回だけだった。
バクラン先生は日本では新国立劇場バレエ団や牧阿佐美バレエ団でよくタクトを振られるそう。