2019年12月11日

11/21 ソワレ ミハイロフスキー劇場バレエ「パリの炎」

ちょっとお金貯めようと思ってバレエ鑑賞は控えようかな〜って思ってたんですよねえ。思ってたんですけど、大好きなパリの炎が! やって来る! ということでチケット買ってしまいました。そしてパリの炎だけで我慢できずに眠りの森の美女も買ってしまいました。結果としては買って大正解! 両方ともすごく良かったんですよ〜! 満足度高い舞台でした。私はレニングラード国立劇場時代の来日公演は知らなくて、ミハイロフスキー劇場バレエは初めての観劇だったんですが、また見たいと思うバレエ団でした。

でも不満点も幾つかあって、先に書いておこう。ツイッターではぼちぼち呟いてしまいましたが、まずチケットが高ーい! SS席で26,000円です。パリオペ、ロイヤル、ボリショイ、マリインスキー並みです。そしてオーケストラも帯同してないし…。
いいバレエ団だと思うけど、パリオペやロイヤルほどのブランド感があるのか!? ということや、ボリショイマリインスキーほど踊れるのか!? ということを考えると、さすがにお高すぎなのです。私は今回パリの炎A席、眠りの森の美女C席で購入しましたが、まあいい舞台なんだけど、やっぱ高かったよね。5000円分くらい高い(席のランクにもよるから5000円分っていうか大体2割分くらいかな)。そのせいもあってか、劇場内がガラガラで…。こんなガラガラの東京文化会館大ホール初めて見ました。
出演料高かったのかな〜とか勘ぐってしまいます。日本はどんどん貧乏になっていくから世界的な相場ではこんなものなのかもしれない…かも……所得爆上げお待ちしております。

そしてもう一つの不満は休憩時間長すぎ! ということ。今回上演されたメッセレル版のパリの炎は全3幕なのですが、1幕30分、2幕20分、3幕25分とかなり話がサクサク進みました。サクサク進むのはいいんだけど、幕と幕の間が25分もあり、2幕なんて休憩のほうが長いじゃん! という事態。1幕と2幕は合わせて1幕でもいいかも。もしくは2幕と3幕の間の休憩はせめて15分とかで…(でも15分だとトイレから帰ってこられない人もいるかも)。

と、最初に不満をいっぱい書いてしまいましたが(Twitterでも言ってる人結構いた)、でも楽しい舞台だったんですよ〜!!


芸術監督:ナチョ・ドゥアト
作曲:ボリス・アサフィエフ
振付:ワリシー・ワイノーネン
改訂振付:ミハイル・メッセレル
舞台美術・衣装:ヴァチェスラフ・オクネフ
照明デザイン:アレクサンドル・キビトゥキン
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

ジャンヌ:オクサーナ・ボンダレワ
フィリップ:ジュリアン・マッケイ
ガスパール(農夫):ロマン・ペチュコフ
ジャック:アレクサンドラ・バトゥーリナ
ディアナ・ミレイユ(女優):イリーナ・ペレン
アントワーヌ・ミストラル(俳優):ヴィクトル・レベデフ
ボールガール侯爵:ミハイル・シヴァコフ
ルイ十六世:アレクセイ・マラーホフ
マリー・アントワネット:アーラ・マトヴェーエワ
キューピッド:サビーナ・ヤパーロワ
テレーザ(バスク人):マリアム・ユグレヘリーゼ
バスク人の踊り:ウラジミール・ツァル、デニス・アリエフ、セルゲイ・ストレルコフ、オリガ・セミョーノワ
オーヴェルニュの踊り:アンナ・ノボショーロワ、アンナ・スコヴァ、ナイリア・ラティポワ、タチアナ・ミリツェワ、ニコライ・アルジャエフ、アントン・アパスキン、マクシム・ポドショーノフ、パヴェル・ヴィノグラードフ
アレゴリック・ダンス
自由:イリーナ・ペレン、マラト・シュミウノフ
平等:スヴェトラーナ・ベドネンコ、アンドレア・ラザコヴァ、ユリア・ルキヤネンコ
友愛:ニキータ・ナザロフ、アンドレイ・ヤフニューク


私が今まで見たことのあるパリの炎はボリショイのラトマンスキー版だけです。しかもシネマだけなので、生の舞台は今回初めて! とっても楽しみにしていました。なんでも今回上演される版は、ワイノーネンの原典版を極力再現し、振付の失われた部分などをメッセレルが創作した「復元版」とのことです。原典版の振付は、現在では殆ど失われてしまっているそう。
それで、会場に着いてパンフレットを購入して初めて知ったのですが、このメッセレル版(ワイノーネン復元版)では、ジェロームがいない! アデリーヌもいない! そう、あのカップルがいないんです〜知らなかった!! あのカップルとそれにまつわるエピソードはラトマンスキー版で創造されたものだったのですね。そういうわけで、ラトマンスキー版とメッセレル版ではそもそも台本がかなり違っていて、言うなればラトマンスキー版はドラマ盛り盛りこってり版、メッセレル版はすっきりシンプル版という感じでした。

で、そのすっきりシンプル版。幕が上がると板付きでジャンヌ、ジャック、ガスパールの親子が。ボールガール侯爵に荷車を引っ繰り返されるという嫌がらせをされてしまいます。ボールガール侯爵がエロ侯爵じゃなくなってた・笑
ラトマンスキー版の侯爵はエロ侯爵でさ〜、娘の前でさえよくやるよほんと…って感じなんです。
で、荷車を引っ繰り返されて困っていたところにフィリップらマルセイユの義勇軍が通りかかり、ジャンヌたちを助ける。フィリップは顔見せという感じで、あっさりと宮廷のシーンへ。
主人公格のジャンヌもフィリップもここまでではあまり踊らないので、宮廷のシーンが終わったらたっぷり踊るのかなと思ったらそのまま一幕が終わってしまった。おお〜、サクサク進むぅ。主人公たちの初登場の場面なんだからもうちょっと踊ってくれてもよかった…、けど、ストーリー的にそんな踊る場面でもないから舞台が停滞しちゃうかな?

宮廷シーン、すごくよかったです。俳優のミストラルはレべデフ、女優はペレン。ふたりともプリンシパルで、プリンシパルの名にふさわしい優美な踊りでした。レべデフは、ラインの曲線感がもう少し増すともっと優美かもしれない。でも、この人の王子も見てみたいと思う美しい踊り。ペレンはさすがの存在感と華やかさ、テクニック。この人がこのバレエ団のナンバーワンなんだなって分かる。そしてこの場面の貴族たちの衣装も本当に素晴らしい。特に貴婦人たちの群青色のドレスは舞台としての最適解。
宮廷シーンはフランスに対するリスペクトを非常に感じる構成でした。フランス的な良いもの、美しいものを表現していたと思います。ロシアより愛をこめてだな〜!
あ、そうだ、ラトマンスキー版の宮廷バレエだと「リナルドとアルミーダ」をやるけど、メッセレル版ではそれはなし。「リナルドとアルミーダ」のシーン、私ちょっと飽きちゃう方なのですが(すんません)、メッセレル版の宮廷バレエシーンは美しさに見とれているうちに終わってしまい、もっと踊ってほしいとまで思いました。でも、ルイ十六世たちの滑稽味のあるポジショニング&回転ダンスはメッセレル版にはなくて、あの謎ダンス結構好きだからラトマンスキーはよくあの謎ダンスを入れてくれたと思います(振付が謎なのでなく、まあ何というか存在が謎というか…、その存在がルイ十六世のキャラクターを強烈に印象付けるいい振付なのですが、まあ何と言うか謎ダンスというのがかなり適切な表現かと)。

2幕。フィリップらマルセイユの義勇軍はパリに到着し、各地からやって来ていた他の地域の人々とも合流、革命への闘志を燃やす。ラトマンスキー版では主役たちが躍るバスク・ダンスも、ちゃんとバスク人の役の人々が踊る。このバスク・ダンスはラトマンスキー版でもそのまま取り入れられていて、皆好きなシーンだと思うけど、ワイノーネンの原振付の秀逸さが証明されていると思った。素晴らしい振付だけに、主人公格の人々に踊らせたいという気持ちは分かる。でもラト版で、マルセイユの義勇軍のフィリップやその辺の農民のジェロームやジャンヌがバスクの踊りを踊るのはよく考えると変ではあるかも・笑 ラト版でもバスク人はちゃんと登場するしね。バスク人たちと仲良くなったからあえてバスクの踊りを踊っていると脳内補完しておく。もしかしてジャンヌたちがバスク地方出身だったらすみません。
踊りのキレはさすがにボリショイの圧勝かな〜と思いつつ(シネマやDVDでしか見たことないけど)、大好きなバスク・ダンスを生で見れて嬉しかったです。テレーザのユグレヘリーゼは大きく背中をしならせ、バスク人たちを率いる勇ましさ、切れ味の鋭さ、ダイナミックさのある踊りでした。ただ、まあ、さっきも言ったけどコールドも含めた全体的な踊りのキレ、迫力はやっぱボリショイの方がよいですね。あそこは最強集団なので然もありなむでしょうが…。

2幕2場では、遂に革命軍がテュイルリー宮殿へ雪崩れ込みます。んが、ここがさあ、映像なんだよね! 宮廷に雪崩れ込んだ後はさすがに舞台上で演じられますが、革命軍が宮殿に押し寄せるシーンがさあ。私はバレエで映像を使うことに必ずしも否定的ではないのですが(映像も舞台装置の一つだと思うから)、でも、この使い方はちょっと違うでしょうと思ってしまう。群衆が押し寄せるシーンなんて、それこそバレエで演じて革命の高まりを表現して欲しかった。ここはちょっとマイナスでした。
宮殿に押し入った後は殺陣なども繰り広げられます。ここでフィリップとボールガール侯爵の殺陣のシーンもあったんだけど、ボールガール侯爵のマントが腕に絡んでしまって、たぶんハプニングだったかと。でもそのマントは舞台上の小道具でもあって、ボールガール侯爵はそのマントでフィリップの足を絡めとったりするんですよね。その辺は面白かったです。でも、殺陣自体はマクミラン版ロミジュリとかの方がガンガン斬り合うので良いです。ちなみにフィリップ役のマッケイとボールガール侯爵役のシヴァコフはバレエ団の内で師弟関係であり、ここは舞台上では師弟対決! という面白みもありました。
その師弟対決も、はっきり決着がつくというよりは何だか有耶無耶の内にボールガール侯爵が大勢に取り押さえられるって感じで、ちょっとグダグダなところが妙にリアルでした・笑

3幕。革命が成功し、といっても史実的にはまだまだこれからいろんなエピソードがあるわけですが、とりあえずこのバレエの上では貴族は倒され、民衆たちの新しい時代がやって来た! という喜びが高らかに歌われる幕です。2幕の最後でテレーザが死んじゃうんだけど、そこはあまり気にしないスタイル。
革命の成功を祝してアレゴリック・ダンスが繰り広げられます。白眉は自由を踊ったペレン、シェミウノフ夫妻。超絶難易度のリフトを次々繰り広げ、会場も盛り上がりました。特に片手でペレンを頭上に持ち上げたシェミウノフが片足立ちになるという振付は、男性のプリンシパルなら誰でもできるというような難易度ではないように思われ、2度目は少しバランスを崩したものの、よくぞやってくれたと思ったものです。
平等、友愛はやや平凡か。平等も友愛も、ついでにそのあとのマッケイのソロも、ずっこけてたしね。舞台が滑りやすいのか? ケガしないかな? って心配になってしまった。
友愛は切れ味の良い軽やかさが加わればさぞよかろうと思いました。

そしてジャンヌとフィリップの結婚。革命後初のカップルの誕生を祝福する民衆たち。
ジャンヌとフィリップのGPDDはみんな大好きお楽しみだと思うんですが、もちろん私も大好き!
ジャンヌを演じるボンダレワはゲスト・プリンシパルで、本拠地はマリインスキー(で、ファースト・ソリスト)。テクニックは圧倒的で、しかもそれを軽々やるから本当に軽やかで清新なジャンヌ。テクニックが強いと熟練感を感じてしまう時もあるけど、若々しいジャンヌでした。グラン・フェッテは男性のような変形型で、しかも後半もガンガンダブルを入れて、でも全然力んでない〜、自然で溌溂として、華もある。素敵でした。
フィリップ演じるマッケイは、これからのダンサーですね。マッケイ、でも、とってもイケメンなの。ジュリアン君と呼びたい。今までバレエダンサーのお顔はそんなに気にしたことがなかったのですが、ジュリアン君があまりに美しいため、何だか色々応援したくなってしまいました。テクニックは色々磨くべきところがある感じです。ファースト・ソリストには7、8年早いかな…というのが正直なところ。結構最初から跳躍や回転でバランスを崩していたりしたので、緊張してるのかな? 力んでるのかな? とかそわそわしてしまい、私ゃ彼の親かよ! って自分で突っ込んでしまった。
結構粗削りというか、荒っぽい感じの踊り方で、でもこれはこの後の眠りではあまり感じなかったので、フィリップとしての役作りだったのかな。彼自身が若いのと、その役作りが若いのとで、フィリップも本当に若くしなやかで、向こう見ずな青年らしさが出ていました。
で、バリエーションでは一回手をついてしまうというはっきりしたミスがありましたが、そこで落ち込まずにその後を挽回して最後はきちっと綺麗な姿勢で回転を決めたのはよかったです。足の形が綺麗にきまっていました。そういう強さがあるのであれば、これからも成長できると思います。今回の舞台では実力を見せつけることはできなかったと思うけど、お顔が美しいのもあって(?)華やかさはあるので、先生や劇団に大事に育ててもらえばいいダンサーになるでしょう。10年後を見てみたいです。…とか書いていたら、なんとジュリアン君ミハイロフスキーを退団してしまいました。あっるぇー!! マジで! 厳密には、東京公演の時点で既に退団していた(?)そうです。ただ、東京公演はミハイロフスキーとして最後の舞台だったとのこと。
う〜ん、フリーでやるより今は組織に所属して育ててもらった方がいいフェーズでは…と思いましたが、まあ本人の選択なので! それにもしかしたら次の所属先が決まってるのかもしれないし、どこでやるにしても(フリーでやるにしても)、また日本に来てね〜!!
ジュリアン君があまりにイケメンなので、フォローしたいがためにインスタを始めてしまいました。

カーテンコール。最後はスタオベでした。私も立った。ジュリアン君のお顔があまりに美しかったので。あと、会場がガラガラで演者やスタッフに申し訳ない気がして(いや私が申し訳ながる必要は全くないんだけど)、せめて盛り上げようという思いもあって、多分その気持ちは会場全体で結構共通だったんじゃないかな〜って思います。思い込みかもですが。テクニック的には、プリンシパル勢はさすがでしたが、主役のマッケイもコールドも、そんなに上手くない人が多くて(別に下手とは言ってないです)、若い人ばっか来てるのか? と思いましたが、そういう若い人たちにこれからも努力して良いダンサーとして成長してもらいたいので、そういう応援の気持ちのスタオベでした。この拍手を糧にして今後も頑張ってほしいです。

拍手に応えてか、最後のカテコではジュリアン君がグランジュテで舞台袖に登場し、会場にどよめきが。続くペレン・シュミウノフ夫妻は何とリフトで登場してくれて、再びどよめく会場。ファンサービスたっぷりで嬉しかった。ありがとうございます!

多分だけど、ラトマンスキー版とメッセレル版では、ドラマチックなラトマンスキー版の方が好きな人の方が多いんじゃないかな…って感じはするんですが、でもメッセレル版の良さも捨て難く、私としては両方見ていきたい演目です。特にメッセレル版の宮廷舞踏のシーンやアレゴリック・ダンスは本当に好きです。でもラト版の闇堕ちエンドもやっぱり好きで…えへへ。

オーケストラは、何だか不思議でした。1幕の時はそんな上手じゃないな〜、あんまりよく聞こえないな〜って思ってたんですが、2幕から急に調子を上げて、音の広がりも響きもよくなって、なんだどうしたんだ? 休憩中に別の楽団に変わった?? と思うくらい上手になりました。びっくりした。不思議体験。

次は同じくミハイロフスキーの眠りの森の美女! 監督のドゥアトの振付です。

posted by 綾瀬 at 22:47| Comment(0) | 雑記・バレエ
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