2019年11月23日

10/20 マチネ 新国立劇場バレエ団「ロメオとジュリエット」

※12/1追記:タイトル間違ってソワレって書いてました。マチネです〜。すみません間違えた! 修正しました。

バレエの感想なんて見たすぐ後に書かないといかんよな〜と思いつつ、1ヶ月以上経ってしまいました。なので短めに。

というわけで2019/2020シーズン、新国立バレエ団1発目の演目はマクミラン版のロミジュリです! マクミラン版ロミジュリっていう時点で最高〜、実際見たらもっと最高! とても熱い舞台でした。

舞踊芸術監督:大原永子
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣装:ポール・アンドリュース
照明:沢田祐二
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ジュリエット:米沢唯
ロメオ:渡邊峻郁
マキューシオ:木下嘉人
ティボルト:福岡雄大
ベンヴォーリオ:速水渉悟
パリス:井澤駿
キャピュレット卿:輪島拓也
キャピュレット夫人:本島美和
乳母:楠元郁子
ロザライン:関 晶帆
大公:内藤 博
ロレンス神父:菅野英男
モンタギュー卿:古川和則
モンタギュー夫人:玉井るい


このロミジュリ(新国はロメジュリか)ね〜、すごく良かったんですよー! 私ちょっと泣いてしまった。ロメオが可哀想で、可哀想で…。
渡邊さん演じるロメオは初めて見るタイプのロメオでした。だってキョロ充なんぞ。ロメオが。キョロ充。
マキューシオとベンヴォーリオは陽キャでしたね〜。特にマキューシオは、お馴染み根っからの陽キャ。ベンヴォーリオはもうちょっと真面目さあり。で、ですね。ロメオはマキュたちに引っ張られる感じの陰キャっつーか、陽キャと並んでるだけにまさにキョロ充。3馬鹿は3人揃って陽キャなことが多い気がするんですけど、最初から、渡邊さんのロメオにはいわゆる底抜けの明るさ、浅薄さってなかったと思うの。ウエーイな中に属していながら、例えば未成年飲酒の場に居合わせてお酒を勧められても「いや、僕はあの、ちょっと……」って言いそうな感じ(でもはっきりとも断れない感じ)。ある意味、最初からちょっと翳があるとも言える。このロメオがね〜〜〜、すごく良かったんですよ〜〜〜。
キョロ充ロメオがジュリエットと出会って恋に落ちてしまって、忍んで彼女に会いに行く。お互いに愛を伝え合う。そして一夜にして大人の男性に成長する。とはいえ若人だから、キャピュレット家とモンタギュー家の争いを力ずくで収める力もない(そりゃそうだ)。でもジュリエットと秘密結婚して、もはやキャピュレット家は親戚、身内になったわけだから、今までのようにリア充仲間と小馬鹿にして諍いを起こすわけにもいかない。力ずくで収めることはできなくても、何とか争いを避けようと親友マキューシオを止めようとする。でもロメオがマキューシオを止めているところを、卑怯にもティボルトが背後から刺殺する。
このティボルトは酒に酔った勢いとかそういうのでなく、明確に、無防備な背中を殺意をもって刺していて、憎ったらしい奴でした。前にロイヤルシネマでギャリーさん演じるティボルトを見たときは、酒に酔っていた勢いとか色々あって刺してしまって、刺した後ティボルト(ギャリーさん)は愕然としたりあわわってなったり、で、またお酒飲んだり、というティボルトだったんですが、今回の福岡さん演じるティボルトはマキュを刺した後「ふふん」みたいな鼻で笑うような表情をしてみたり、本当に憎たらしい悪役で「お前が死ねばいいのに〜〜〜」と思わせる名演でした。ギャリーさんのティボルトも福岡さんのティボルトもどっちも素敵です。
で、親友マキューシオを殺害されたロメオ。自分が彼を引き留めていたせいで背後から刺殺される隙を作ってしまったという引け目もあるかもしれない。陰キャ寄りで、真面目系で、今までは友達に合わせてキャピュレット家を小馬鹿にしたりもしてたけど、ジュリエットとの秘密結婚後はどんなに煽られても剣をとれなかったのに、遂に剣をとって復讐してしまう。
で、倒れたティボルトの元に駆け付けてきたロメオの姑、キャピュレット夫人。演じる本島さんが本当にお美しい方で眼福。半狂乱になって髪を振り乱し、剣まで手に取るキャピュレット夫人のスカートの裾に頬を当てて許しを乞うロメオ。ここ泣いちゃったんですよね。え? ここ? って思う向きもあるかとおもうんですが、ロメオは本当にキャピュレット家と争いたくなかったし、親戚に誠意を示したかったし、本当に本心から夫人に許しを乞うてるんだよね、でも彼が許されることはなく、私たちは恋人たちがこの後死に向かって突き進んでいくしかないのを知ってる、っていうのが本当に切なくて、ロメオが可哀想で。
キャピュレット夫人も名演でした〜。人間としての彼女自身が見えるのってこのシーンだけで、他のシーンは夫に従順な良き妻、娘を気遣う優しい母、っていう、貴族女性の役割を果たしているシーンだけで、実際、彼女の人生の大半の時間はそういう役割を果たすものだったんだろうなって伝わってきます。でも、彼女にとってはティボルトとの不倫の恋が唯一彼女自身の本物の思いだったのでしょう。ロメオとジュリエットが二人だけで真実愛し合ったのと同じように、ティボルトとキャピュレット夫人もひっそりと本心からの愛を通じ合っていたんだ、彼女の一生に一度の恋もここで永遠に断ち切られたんだ、と思うと許しを乞うロメオも切なく、本当の愛を断ち切られてしまった彼女も切なく、やっぱ思い出しても泣けてきちゃう。
どーでもいいけど、昔はティボルトとキャピュレット夫人が不倫の恋人同士っだって知らなくて、このシーンで夫人がここまで取り乱す意味がよく分からなくて、「この人キャ夫人だと思ってたけどもしかしてキャ夫人じゃなくてティのおかんなのかな? もしくはティがジュリエットの従弟じゃなくて兄とかそういう設定に変えてるのかな?」とか思ってましたね…。

で、以降、ロメオとジュリエットは様々な行き違いから遂にはふたりとも死ぬしかなくなってしまうわけだけど、偉いのは漫然と死に向かったのでなく、生きて愛を貫くために戦って、でも上手くいかずに敗北して死んでしまうという点だと思います。人間性を確立し、自分たちの人生を勝ち取るために戦った。でも上手くいかなかった…。人間ドラマですね。

ロメジュリは衣装も豪華で美しく、見ていて楽しいるんるん 私はやっぱり煌びやかな衣装が好きだな〜。でも、マンドリンの踊りのミノムシ衣装はなんぞ?とやっぱ思っちゃう。普通の旅芸人っぽい衣装ではいかんかったのであろうか…。市民でないというのが一目で分かるのはある意味分かりやすいけど。どうでもいいけどここで他カップルの結婚式を見ていて自分とジュリエットの結婚式を妄想するロメオはキョロ充なのもあってすごくよかったです。その夢は叶わないんだけどさ。

それにしても全幕見ていて思うんですが、ロメジュリってホント3馬鹿は最初から最後まで(マキューシオとベンヴォーリオはマキュが死ぬまで)出ずっぱりで、男性ダンサーを鬼のように躍らせる鬼畜な演目だな〜と思います。でも見ている方は嬉しい! 3馬鹿はさすがの踊りでした。息の合った振る舞い、音楽性の高さ、3人で踊るシーンは本当に楽しい。高い跳躍に鋭い回転、きびきびとしたダイナミックな動きなど、テクニックの高さを感じる踊りでもありました。これだけ踊れるダンサーがこんなに沢山いるなんていい国だな日本〜!
さて、マキューシオの私的一番の見所は死の直前、ロメオを毅然と指さすところなんですが、木下さん演じるマキューシオは、それまでアホっぽい陽キャだったマキュが彼の中の怨念を爆発させる、彼自身のドラマや人生をもっと見たかった、と思わせる演技でした。
ただ、木下さんの踊っているところ、ちょっと膝が気になる。ロメオとベンヴォと見比べて、ふたりは気にならないんだけど、木下マキュだけちょっと膝が、なんかかくっとしてる気がして。膝が気にならなくなるともっと素敵だな! 私マリインスキーのキムキミン様好きなんだけど、好きなんだけど、彼も膝(たまに肘も)が気になる…。膝にこだわりがあるのだろうか…。
そうだ、マキューシオって、彼が死ぬときの演出が「もう分かったからそろそろ死んでいいよ」と思うくらいなかなか死なないことが多いと思うんだけど、今回のロメジュリでは割りとさくっとお亡くなりになって、しつこくなくてよかったです。あそこ、ほんと「死んでいいよ、はよ次いこ」って思ってしまうことあるからな…。

あとそうだ、パリス。パリスも本当にカンパニーやダンサーによって毎回すごい違うパリスだと思うんだけど、今回のパリスは別に格好いいとかはないけど普通に真面目で誠実そうなパリスで、ジュリエットに拒否される理由が分からず戸惑ったりムッとしたり、で、ムッとしても後を引かないあたりが「基本誠実でお坊ちゃんでお人好しなんだな」って感じでよかったし、結局ジュリエットに拒否される理由も分からないまま突然殺されちゃう(拒絶の理由は死の直前に悟ったかもしれない)のが可哀想でもありました。
私はパリスが格好いいともうロメオじゃなくてパリスでいいじゃんって思っちゃうんですが(どうでもいい情報)、井澤駿さん演じるこのパリスは、もしジュリエットがロメオと出会わず彼と普通に結婚していたら、少なくともキャピュレット夫妻よりは心の通じ合った温かく平凡な家庭が作れたんじゃないかな〜って感じがしました。

オーケストラはところどころちょっと微妙でした〜。金管中音域弱いかな。

と、まあ特に印象深かったところを中心に手短に振り返ったつもりだったけど結構長くなったな。今回のロメジュリがすごくよかったので新国バレエをもっと見たい欲が高まりました。とりあえず12月のくるみと2月のマノンはチケット買いました(ムンタギロフ回)。マノンは買い足したいかも〜。ムンギロフ様客演ありがとうございます! お怪我などなさらず無事に日本においでくださいませ〜〜〜!!

そうだ、話があっちこっち飛ぶんだけど、んで何の本で読んだか忘れちゃったんだけど、キャピュレット家とモンタギュー家の争いって、単に仲が悪いっていうのじゃなくて皇帝派か教皇派かの争いだそうで、どちらが勝利するかでヴェローナの街の運命も変わるっていう、個人がどうにか仲裁して何とかなるような問題ではないんだそうです。どちらにも、一族の栄達という欲望もあろうが同時に街のための正義も信念もあろうし、どちらが勝っても街にとってメリットデメリットがあるという。この皇帝派と教皇派の争いの主人公たちは、カノッサの屈辱で有名なハインリッヒ4世とグレゴリウス7世ということかと(多分…)。
そういう背景を知ると、ロメオとジュリエットの恋がいかに絶望的なものだったか、本当に絶望的で可哀想な気持ちになります。

あとそうだ、ロメオを演じた渡邊さんは千秋楽の後プリンシパルに昇進されたそうですね。プリンシパルにふさわしい実力だと思います! おめでとうございま〜す!



posted by 綾瀬 at 21:59| Comment(0) | 雑記・バレエ
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: