2018年08月19日

8/8 世界バレエフェスティバル Bプロ(3)

― 第3部 ―
「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
メリッサ・ハミルトン/ロベルト・ボッレ


可愛いロミジュリ! 超お気に入り!
ジュリエットは可愛く、ロミオは格好いい。初恋の甘酸っぱい星屑のようなパ・ド・ドゥ。
メリッサ・ハミルトンのジュリエットは初恋に戸惑い、恐れ戦きつつもロミオに惹かれる、というよりは、初恋のときめきに少し戸惑いつつも、それよりもロミオへの愛情に一直線に飛び込んでいく、積極的な少女のように感じられました。
ロベルト・ボッレのロミオは甘い雰囲気たっぷり、包容力のある大人っぽいロミオで、まあ16歳には見えない・笑 少なくとも24歳くらいに見える。ジュリエットも原作の設定では14歳ですが、まあ17歳くらいには見えました。ロミオの存在に気付いた時に見せた少しの戸惑いがなければ彼女も24歳くらいに感じても不思議はないかも? シェイクスピアの原作が書かれた当初と現代では寿命が違うから、精神年齢的にはプラス10歳くらいしてもそんな変ではないかもですが。
触れ合っては離れ、またくっ付き、軽やかに回転し、ひらひらした衣装を情感たっぷりに翻して、複雑なリフトも軽々と繰り広げ、秘めやかな恋を高め合っていく二人の様子が本当によく表れていると思いました。
可愛くてねえ、応援したくなるカップルです。少女漫画の世界。
ロミオがキャピュレット家のパーティに忍び込んだのはジュリエット以外の女性ロザラインへの恋心ゆえだったという事実も忘れてしまいます。って、忘れてない・笑
いや、まあ、若干ロミオに対しての不信感はありますが、でももうこの時の二人には関係ないことですね。

「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ミリアム・ウルド=ブラーム/マチアス・エイマン


バランシンからロシアバレエへのリスペクト。美しい古典美を期待して鑑賞。
ただやっぱりバランシンはどうも苦手で、というか抽象的なバレエのどこに心を寄せればいいかよく分からないというか…、すみません。
確かに美しい動きが続くけど、これが一番美しい動きなのかな? と思うと何だかぎこちなさを感じるシーンがもあって…。何だろう。よく分からないんだけど、肘や、上半身が気になったんですよね。
う〜〜〜ん。とはいえ「変」とまでは思わず。ふつーに終わったというか。パリ・オペのエトワールよ! 宝石の王者ダイヤモンドよ! という圧倒的キラキラ力(造語)みたいなのは感じず。

「マノン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
アリーナ・コジョカル/ヨハン・コボー


沼地のパ・ド・ドゥ。
ん、ん、ん〜〜〜、沼地ってこんなだっけ? というのが率直な印象でした。
振付は大分少ないような? 動けてないような? この間英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズンでサラ・ラム/ワディム・ムンタギロフのペアで見た沼地は、息絶えつつあるマノンを必死で励まし、生き永らえらせようとするデ・グリューの献身の振る舞いが(揺さぶったり振り回したり)盛り込まれていたように思うのですが。
なんかさらっとしてない? という違和感を抱えつつ、振付を完全に暗記しているわけでもないので、これからだっけ? これからだっけ? と思っているうちにいつの間にか終わってしまいました。
あっるぇ〜〜〜?
ガラで見るのと、1幕、2幕と積み重ねて全幕見るのとでは積み重ねが違うからそう感じるだけかなあ? って思ったけど、やっぱりあまりに違い過ぎたと思うの。
「???」と思っているうちに終わってしまったので、ラスト、デ・グリューの慟哭も「もしかしたらまだ生きてるんじゃない? とりあえず振り回してみれば?」って思ってしまったのであった。

「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
サラ・ラム/フェデリコ・ボネッリ


初の生サラ・ラム! と期待して鑑賞。ラムさんは、冬物語のシネマ見た時は特に印象に残らないなーって感じだったけど(失礼である)、マノンはよかった!
で、演目も今回上演されるバランシン作品の中では何となく一番とっつきやすそうだな〜と思っていたのですが、あー…、すみません、心地よく寝てしまいました…。折角の生サラが…。
幕が開いた時、フェデリコ・ボネッリ演じるアポロが、辺りを圧倒するような威風堂々たる姿で座っていて、それがこの作品における私の印象と感想の全てになってしまいました…。勿体ない……。

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アンナ・ラウデール/エドウィン・レヴァツォフ


わーいまた大好きな椿姫だー、白と黒両方見られるなんて嬉しい! そして白と黒なら黒の方がより好きなのでワクワクしながら鑑賞。
病の影の差すラウデールさん演じるマルグリットの立ち姿が印象的。ベールを剥ぎ取った瞬間の、全身から発散されるアルマンへの懇願の念が強烈で、強烈という言葉に反するかもしれないけど、やはり死にゆく者なのだなあと。
レヴァツォフさんはハンサムな金髪で長身で、着やせするのかひょろりとした姿の印象で、いいとこのボンボンのアルマンっぽさ満載。そういう意味ですごくハマってる気がしました。
はじめ、アルマンはマルグリットを拒絶しますが、徐々に逆転して、最後にはアルマンの方からマルグリットを求めて愛を乞う。激情に抗えずに最後に一度だけ情を通じる二人が本当に切ないなあ〜。その時マルグリットが黒いドレスを脱いで白い下着姿になるのが本当に印象的。
二人の愛の絶頂の白のパ・ド・ドゥと、破滅の前の最後の愛の交歓の黒のパ・ド・ドゥ。
マルグリットの命が消え去る前の最後の一瞬の強い煌きと逃れ得ない破滅が究極なまでにドラマティックで心打たれます。
レヴァツォフさんがアルマンっぽいな〜っていうのが、ガキっぽくマルグリットを虐待し、拒絶し、でも拒み通すことができなくて、結局彼女にまつわり付いて自分を捨てないでほしいと懇願する年下っぽさというか、弱さというか、そういうのがよく表現されているように感じたのです。
本質的にはマルグリットの方がずっと強くて優しくて、パ・ド・ドゥを踊りながら次第に彼女の方にリードが移っていくような印象を受けて、美男美女で素敵なドラマを見せてもらったと思いました。
ショパンの難曲が生ピアノで沢山聞けたのも嬉しかったです。


― 第4部 ―
「じゃじゃ馬馴らし」
振付:ジョン・クランコ
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
編曲:クルト・ハインツ・シュトルツェ
エリサ・バデネス/ダニエル・カマルゴ


原作に比べてよい意味で少女漫画な仕上がり。だって原作通りだったらねえ〜、財産目当てで兵糧攻めしてくる夫に白旗上げてそれがハッピーエンドとかちょっと笑うところ分からないもん…。そういう、現代人にとっては笑うところの分からないDVぽさをかなり薄めてコミカルにして、何はともあれ愛情で包み込んだ演出に仕上げており、しかもそれをキレッキレに踊るエリサ・バデネスとダニエル・カマルゴのカップルはとってもお似合いでした。
冒頭、ペトルーチオを思い切りビンタするキャタリーナ。バシィッと鋭い音が場内に響き渡り、思わずどよめきが上がりました。演者はちょっとにやっとしたような気がします(気のせいかも)。
ここはしょーじき女性から男性へのDVに当たりますが、ビンタくらったあとのペトルーチオが元気いっぱい鋭く力に満ちたアクロバティックな振付で舞台を飛び回るので、「DVじゃん…」みたいな引いちゃう感じがなく、ああ、これがきっかけでペトルーチオの大作戦が炸裂するのね、という説得力を感じます。
跳ねっかえりのキャタリーナもキレッキレ(これがまた手の付けられないじゃじゃ馬っぷり)、彼女を押さえ込んで言うことを聞かせようとするペトルーチオもキレッキレ(いやーキャタリーナみたいな子は大変だねえ、という共感を覚える)、見ていて楽しい絶妙なやりとりの応酬です。とってもパワフルでエネルギッシュなカップル。
クランコ振付のえらいところは、そういう荒っぽい暴力的な動作も含む踊りを、でも暴力的でなく、ちゃんと愛情として表現したところで、鼻につくところも厭味なところもない点だと思います。
ペトルーチオがキャタリーナのことが大好きなのが分かって、キャタリーナが次第にペトルーチオにほだされていく過程も分かって、最後は二人の心が通じ合ってラブラブハッピーエンドという、幸せな演目。
見ていてとっても楽しかったです。

「ヌレエフ」より パ・ド・ドゥ
振付:ユーリー・ポソホフ
音楽:イリヤ・デムツキー
マリーヤ・アレクサンドロワ/ウラディスラフ・ラントラートフ


ボリショイの話題の新作「ヌレエフ」から、ヌレエフと運命のパートナー、マーゴ・フォンテインとのパ・ド・ドゥを。
おおおー見れて嬉しい! この「ヌレエフ」は、ニュースにもなっていましたが、ロシア当局の厳しい締め付けにあい、初演が直前で急遽ドンキに差し替えられたり、演出・台本等を手掛けたキリル・セレブレンニコフ氏が何と逮捕されたりするなど、色々曰く付きの作品、というか母国ロシアにおいて不当な弾圧を受けた作品で、ヌレエフが亡命してから何十年も経ってもやっぱり旧ソって…という思いを抱かせる感があります。偏見はよくないですが。
あー日本に全幕もってきてほしいー! と思います。
そして演じるマリーヤ・アレクサンドロワとウラディスラフ・ラントラートフは、さすがはボリショイのダンサーで、鍛え上げられた肉体が的確なところに的確な動きでぴしぴし嵌まる感じで、とはいえ全体が滑らかで濃密でエレガントで、二人のパートナーシップが情熱的に流れるように歌い上げられていました。夜明けのような爽快感もありました。
衣装はタートルネックぽい、地味な色合いでした(めっちゃヌレエフっぽい)。もしかしたら全幕見たら英国ロイヤル・バレエらしい豪華絢爛な舞台衣装で踊るシーンもあるのかな? やはり全幕見たい。

「アダージェット」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:グスタフ・マーラー
マリア・アイシュヴァルト/アレクサンドル・リアブコ


ノイマイヤーのドラマティック・バレエは大好き! しかし抽象バレエはちょっとよく分からん…というのをもう取り繕う余地もないわたくしであります。
でも、この演目は何となく心地よく見てたなあ〜というのを覚えています。
具体的にどういうこと? というとそれが難しい。ただアイシュヴァルトさんがさっと足を伸ばした時や、リアブコさんが彼女をサポートする時の動きが、ただただ美しかった。
もしかしたら抽象バレエの中の動きの一つ一つにダンサー自身の物語るものがある、ていうのはこういうことなのかなあ、その片鱗に少しだけでも触れられたのかなあ、という(勝手な勘違いかも)感慨を抱きました。
美しい踊りが見られて満足。

「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アレッサンドラ・フェリ/マルセロ・ゴメス


まだオネーギンを全幕見たことはないのですが。有名な手紙のパ・ド・ドゥ。
世界バレエフェスティバル Bプロ全体を通じての白眉でした。
特に最後、アレッサンドラ・フェリ演じるタチヤーナの声なき慟哭はいつまでも胸に残り続けました。彼女のこれまでの人生、これからの人生を感じさせる渾身の演技だったと思います。
オネーギンは若い頃の傲慢さを捨て、タチヤーナの衣装に縋り付いて愛を乞うものの、既に小娘でないタチヤーナには通じない。でも、彼女の心が動かないわけではない。千々に思い乱れ、涙を流して葛藤し、それでも人生にたった一度、物語のような恋に身を任せるのでなく、拒絶して公爵夫人としての矜持と家庭を守ったタチヤーナ。
弩級のドラマですな〜。
人生にたった一度の物語のような恋、というと、源氏物語の空蝉とか、ローマの休日とか、色々ありますけども。タチヤーナとオネーギンは中年同士ということもあって、重い。
オネーギンはソロルとタメを貼るレベルのクソ男だと思いますが(すぐクソとか言ってしまう)、今ここにいるオネーギンはアレッサンドラ・フェリのためのオネーギンという感じがしました。オネーギンの振る舞いは全て、マルセロ・ゴメスがアレッサンドラ・フェリのために行う献身であると、そういう感慨を抱かせるような舞台。見ているのはオネーギンとタチヤーナなのか、アレッサンドラ・フェリとマルセロ・ゴメスなのか? だからなのか、クソ男オネーギンという印象がなくて(そもそも踊りを見ながらいちいちこの登場人物はクソだのどーのとか考えるのもどーかという気はする)、ひどく弱った気の毒な中年という感じがして、しつこくタチヤーナに取り縋る姿は「これ以上タチヤーナを苦しめないで!」と思わせる反面、やっぱりちょっと可哀想な感じもして、彼に救いがあればいいのにという同情心も湧き起こらせる。
しかし芝居が素晴らしすぎて、その印象が強烈に胸に焼き付けられて、踊りのことがあまり思い出せないという…。うぅ、もう一度見たい! けどきっともう、そんな機会はないんだろうなあ〜。
とにもかくにも素晴らしいドラマでした。

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
マリア・コチェトコワ/ダニール・シムキン


世界バレエフェスティバルBプロのトリはドンキです。
賑やかな音楽と振付が楽しく、お祭りの最後を締めくくるに相応しい盛り上がる演目だと思います。
ひとつ前のオネーギン、フェリさんの魂の慟哭がまだ目に焼き付いているうちに始まるのですが、会場の空気に臆することなく、言うならば最初からドヤ感を纏って登場するコチェトワさんとシムキンさんなのでした。
冒頭の180度開脚片手リフト、あまりの見事さに会場からどよめきが出ました。オネーギンの気分から、一気にドンキの世界へ引き込まれました。
マリア・コチェトワは一本のマッチ棒のように美しい開脚を長時間キープ。マッチ棒という言葉の選定が悪いかもしれないけど見た時そう感じたんだもん。コチェトワさんと支えるダニール・シムキンは小柄な体躯ながら全くぐらつかずに美しい姿勢でコチェトワさんを掲げて、普段の鍛錬のストイックさが窺われます。
シムキンさんは公式サイトの出演者紹介でも「お祭り男」と紹介されていましたが、お祭り男の称号に相応しい基本に忠実な超絶技巧の連発で、場内は大いに盛り上がりました。
超絶技巧といっても、スピードと迫力でただ押しまくるのでなく、腕の動き、足さばき、見せる時の姿勢、ひとつひとつが丁寧で美しく、どんな時でも軸がぶれることなく、見ていて気持ち良かったです。
コチェトワさんのキトリも小柄で可愛いしさ。グラン・フェッテは全部シングルだったけど、余裕が感じられました。
キトリとバジルらしい、きびきびした気風のいい踊りでした。シムキンさんは次シーズン(つーか今シーズンつーか、来月)からベルリン国立バレエ団に移籍らしいので、ますますドイツ行きたくなったなあ。


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posted by 綾瀬 at 00:14| Comment(0) | 雑記・バレエ
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