2019年11月03日

10/13 ソワレ K-BALLET COMPANY マダム・バタフライ(2)

で、2幕。ピンカートンは日本での任期が終わり、本国へと戻って既に数年。バタフライはピンカートンとの間に生まれた息子と、世話係のスズキと共に長崎の屋敷で彼の帰りを待つ。バタフライは断髪し、洋装を身に纏い、改宗までした夫への貞節を保ち続けていることを示す。
既に破局を予感させる雰囲気が舞台には漂っている。帰らない夫を恋い慕って幻想の彼とワルツを踊るバタフライ。だが冷静に立ち戻れば夫はおらず、彼の軍帽だけが残されている。

この後はしばらくマイムのシーンが続きます。マイムって、舞台にとって重要なことだと思うし、演者は丁寧に演技していたと思うけど、連続するせいか、この辺からどうも退屈で…。
う〜ん、やっぱりなんか、それだけでなく、どうも薄い感じがしました。バタフライは張り詰めた緊張感があって、彼女自身破局を予感していたのではないかと私は感じましたが、武家の娘としての誇り高さのようなものは特に伝わらず。スズキは、バタフライのための舞台装置としてのみの存在かな。彼女自身の思いはあまり分からなかった。後で出てくるピンカートン夫妻来訪のシーンでスズキ怒りのヴァリエーションがあってもいいくらい、などとも思ったり。
シャープレスは人間として誠実であろうという感じが佇まいからもしてよかったです。

立派な軍人となり、バタフライに求婚しにくるヤマドリ。息子の存在を目にしてぎょっとするあたり、リアルでよい。で、大した葛藤も見せず、彼は舞台から退場。え〜惜しい! と思った。大和和紀先生の中編にレディーミツコっていう傑作があって、もちろんこれはクーデンホーフミツコ伯爵夫人の漫画です。奇しくもバタフライと同じ、外国人男性と結婚した明治期の女性の話。バタフライと違ってミツコは妾でなく正妻だけど。ミツコが夫、クーデンホーフ=カレルギー伯爵の死後、一族と対立しながらオーストリアで子供を抱えて領地経営に奔走するところで、一度だけロマンスが生まれかけて、燃え上がる前に消えてしまうのよね。名前忘れたけど、誠実な学者肌の男性が、日本人であるミツコをよく支えて、お互い仄かな恋心を抱いてしまうという。でもそれが社交界の噂になりかけ、自分の存在がミツコのためにならないとよく理解している彼は自ら外国へ渡って身を引く。彼はミツコへの愛と尊敬のために身を引くわけで、ミツコもそれを分かっている。というかなり切ないくだり。
ヤマドリは全然、この男性(名前忘れてしまったが…)に及ばない。さくっと退場しちゃうしね。この男性くらいのドラマを見せてくれたらよかったのに〜! などと、この辺は舞台を見ながらレディーミツコを思い出していたのでした。
ついでにミツコの夫カレルギー伯爵は、日本から帰国しなければならなくなった時身を引こうとしたミツコを引き留めてオーストリア・ハンガリー二重帝国に連れていくんだよね〜。ヨーロッパに渡ってからのミツコは想像を絶する苦労をするわけではあるけど、バタフライを単なる現地妻としてのみ愛し、その通りにのみ扱ったピンカートンとは人間が違うっていうか。ピンカートンはそういう役割だけどさ。

で、大砲の音が鳴り響き、薄くて退屈なシーンがようやく終わります。おーやっとピンカートン帰ってきたか。というわけで2幕2場。彼を迎えるため庭へ走り出るバタフライ。が、ピンカートンは何と正妻ケイトを伴っていた。バタフライの息子を連れにきたのですね。ケイトは1幕の時の溌溂とした若々しさはなりを潜め、押しも押されもせぬ正妻といった、威儀を正した様子でバタフライに接します。バタフライに感情移入していると、ケイトは憎たらしい役だと思うんだけど、私は今回はあまりそう感じず。彼女も婚約者に裏切られた身の上だしね。そんで、別に大和和紀先生の話の続きじゃないんだけど、源氏物語で言えばケイトは紫の上でバタフライは明石の君で、夫が他所に作った子供を引き取る側の正妻には正妻の、血のにじむような葛藤があるのを我々は想像できるわけでもありまして。悪いのは全部ピンカートン!

ケイトが息子を連れて行くのを、地面にひれ伏したまま送るバタフライ。キョドるピンカートン。というかこいつは再登場してからずっとキョドりっぱなしで、堂々としたケイトとの対比もあり、ほんとアカン奴だなって感じ。バレエ界のアカン奴シリーズでアルブレヒトやソロルといった歴戦の猛者がいると思うんだけど、こいつらには恋人を裏切った後それぞれ思いを発露させる踊りがあるから、見る側もキャラクターの好き嫌いはあるにせよ見所があると思うんですが。でもピンカートンはキョドってるだけで、もっと踊ってもよかったのでは? という感じ。
やがてケイトもピンカートンも、その他全てが舞台から消え去って行っても、まだじっとひれ伏したまま動かないバタフライからは彼女の悲しみが伝わりすぎるほどに伝わって来て、劇場内が緊張したような気がしました。

でも〜、なんかここに至るまでに大分退屈モードだった私は、すっかり集中力をなくしてしまって、感情移入もそんなにできなくて、なんせバタフライのこと「頭ヤバい子かな」って思ってるからね…、自分で書いててて、「まだ思ってんのかよ!」ってびっくりするけどね…。
振袖を翻して、バタフライが最後の踊りを踊る。彼女は何を思って踊っているんだろう。裏切られた愛への怒りはなく、悲しみか。というと、悲しみばかりというのもいまいちぴったりこない。ここで語られたのは彼女の矜持なのかなあ。なんて考えつつ、やっぱ袖が邪魔、と思うのであった。そして袖が邪魔で踊りに集中できず(袖だけが原因じゃないけど)、踊りのここが良かったとかここがいまいちだったとか、そういう印象も残っていない。

ラスト。幼い息子がバタフライを求めて戻ってくる。そして(1)で書いたとおり、バタフライは彼に目隠しをして彼の目の前で父の短剣によって自害する。短剣は息子の手に渡り、彼は駆け出していく。

ラスト、舞台としては美しい場面だったんですよね。でも息子にそんな呪いはかけたくないよー。誇り高い武家の娘なら、父から受け継いだ呪いは断ち切って、自分で終わりにしてほしいよー。それが自害するより何より本当の強さでは?
というわけで舞台としては美しくとも私の感情としては釈然としないまま、終幕。

私、そんなにバレエに詳しいわけでもないし審美眼があるわけでもないんで恐縮ですが、踊りのシーンが少なくて(特に2幕)、踊りもいまいちなところがちょくちょくあって、正直あんまり面白くなかった。ピンカートンとケイトのPDD、ピンカートンとバタフライのPDDは気に入りましたが。これはピンカートン演じる山本雅也さんの波長が私に合ったということかも。
そんなわけで、一番良かったのはオーケストラという結論になってしまいましたとさ。

Kバレエって、他のカンパニーの公演よりちょっとお値段お高めなんですよね。12,000円(たぶん)払ってこれか〜って、舞台終わったときは正直思っちゃった。今回パンフレットも購入していて、これも3,000円もしたし。いや、嫌なら見るなよ、買うなよっていうのは正論だと思うけど。
マダム・バタフライについては、今後余程のブラッシュアップがなければもう見ないと思います。
でも、舞台って見る側のコンディションも重要だから、今日の私でなければまた違う楽しみ方ができたのかなあ。

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前回の記事で貼るの忘れた。3,000円のパンフレット。浮き出し箔+フランス製本と装丁凝ってるけど、装丁凝らなくていいから少しでも値段下がると嬉しい。装丁まで含めてひとつの作品というのはよく理解してはいますが…。クレオパトラの時の2,500円も結構高いな〜って思ったけど、でもクレオパトラは舞台の内容が気に入ったのでね。いや、でも、2,000円くらいだったらやっぱ嬉しいな。ケチ臭いことばっか言ってますが。

posted by 綾瀬 at 01:29| Comment(0) | 雑記・バレエ

2019年11月16日

ベルギー旅7日目(13) 引き続き公文書館(自由ブルージュ博物館)の中

前回に引き続き見学している自由ブルージュ博物館、暖炉の間。

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こちらの暖炉の間ですが、見事な暖炉だけでなく、沢山の絵画たちも飾られていました。これはアダムとイブかと。

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お隣にいらしたスペイン風装束の女性の肖像画。このエリザベスカラー見る度にフェイスライン周りの白粉がレースについちゃうよな…どうしてたんだろ…と思う。

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他にも白粉の付きそうな貴顕の皆様の肖像画たち。付かなそうな武装の方もいる。

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時代が下ってロココのちょい手前って感じ。

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マリア・テレジア? 違うかな? どうかしら。

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肖像画以外の絵画もあります。向かって左側は最後の審判、右側は、あれだ。前にこの記事で書いた、「カンビュセスの裁判」です。これ、同じ絵がグルーニンゲ美術館にありました。どっちが複製か分かりませんが(多分グルーニンゲ美術館にある方が本物だろう)、この絵は元々、ブルージュの市庁舎の参事会室(裁判が行われる)に飾られるために発注されたものだそうなので、つまりそれがこちらの建物だったんですね〜(気付くのが遅い)。

ってここまで書いて、「…この写真の絵に息子おらんやんけ!」と気付き、ちょっとガイドブックを見てみたんですが、グルーニンゲ美術館にある絵とこの写真の絵と、人物や服装なんかは一緒なんだけど、背景が違いました。なんでじゃろ。
グルーニンゲ美術館にある方は親父の生皮被せた椅子に座らされる息子が描かれていて、こちらの暖炉の間にある方の絵はなんか山をバックに開放的な感じになってて、息子は行方不明です。なんでじゃろ。

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「カンビュセスの裁判(息子行方不明Ver)」のアップ。この絵の意味とかは前に書いたので割愛しますが、痛そう。

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こちらの部屋には他にも、何だろう。儀典用? か何かの、何かもありました。この文章何かとしか言っていない。

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何かのアップ。何ですかね、これ…。秤に載せる重り? みたいに見えなくもない。
分からないまま進みます。

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再び暖炉の見事な彫刻を眺めつつ。

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壁の見事な装飾も見る。これ、壁画だったのかな、タペストリーだったのかな。忘れちゃったバッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)
多分壁画だったと思うんだけど…。違ってたらごめんなさいもうやだ〜(悲しい顔) オイオイって感じですね。

ま、こんな感じで沢山の絵画たち、彫刻の見事な暖炉、壁画(たぶん)、謎の何か、など、じっくり堪能しましたので次のお部屋へ。

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隣のお部屋は、まさに裁判を行うような設備を整えたお部屋になっていて、こちらも見学可能。上の写真は裁判っぽい椅子。

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傍聴席っぽい椅子も。

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可愛い窓。窓の上方にある紋章は上で書いたアダムとイブの絵にも、林檎っぽく(?)アレンジされて描かれていました。

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そしてここにも。

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アップにしてみる。この、白地に青い斜めラインの紋はどこの紋、ナノカナ? 分からんのかいって感じですが。ブルージュの街の紋っぽいけど、ブルージュの紋と言えばこの記事で書いた獅子と熊の紋章って感じだし、どうなんだろ。ただ紋章って一つでなくて色々あるみたいなので、もしかしたら時代や使うシーンに応じて複数の紋章を使い分けているのかもしれないですね。
どうでもいいけどこの記事途中語り口が急に変。

と、そんな感じで公文書館の見学を終えます。

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扉を開けたらもうこんな素敵な広場なんだよ〜〜〜ぴかぴか(新しい)
こんなところで暮らしたい。できれば働かずに。欲望が隠せない。

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ドアノッカーもとっても可愛いグッド(上向き矢印)


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posted by 綾瀬 at 13:07| Comment(0) | 16年12月ベルギー

2019年11月23日

10/20 マチネ 新国立劇場バレエ団「ロメオとジュリエット」

※12/1追記:タイトル間違ってソワレって書いてました。マチネです〜。すみません間違えた! 修正しました。

バレエの感想なんて見たすぐ後に書かないといかんよな〜と思いつつ、1ヶ月以上経ってしまいました。なので短めに。

というわけで2019/2020シーズン、新国立バレエ団1発目の演目はマクミラン版のロミジュリです! マクミラン版ロミジュリっていう時点で最高〜、実際見たらもっと最高! とても熱い舞台でした。

舞踊芸術監督:大原永子
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣装:ポール・アンドリュース
照明:沢田祐二
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ジュリエット:米沢唯
ロメオ:渡邊峻郁
マキューシオ:木下嘉人
ティボルト:福岡雄大
ベンヴォーリオ:速水渉悟
パリス:井澤駿
キャピュレット卿:輪島拓也
キャピュレット夫人:本島美和
乳母:楠元郁子
ロザライン:関 晶帆
大公:内藤 博
ロレンス神父:菅野英男
モンタギュー卿:古川和則
モンタギュー夫人:玉井るい


このロミジュリ(新国はロメジュリか)ね〜、すごく良かったんですよー! 私ちょっと泣いてしまった。ロメオが可哀想で、可哀想で…。
渡邊さん演じるロメオは初めて見るタイプのロメオでした。だってキョロ充なんぞ。ロメオが。キョロ充。
マキューシオとベンヴォーリオは陽キャでしたね〜。特にマキューシオは、お馴染み根っからの陽キャ。ベンヴォーリオはもうちょっと真面目さあり。で、ですね。ロメオはマキュたちに引っ張られる感じの陰キャっつーか、陽キャと並んでるだけにまさにキョロ充。3馬鹿は3人揃って陽キャなことが多い気がするんですけど、最初から、渡邊さんのロメオにはいわゆる底抜けの明るさ、浅薄さってなかったと思うの。ウエーイな中に属していながら、例えば未成年飲酒の場に居合わせてお酒を勧められても「いや、僕はあの、ちょっと……」って言いそうな感じ(でもはっきりとも断れない感じ)。ある意味、最初からちょっと翳があるとも言える。このロメオがね〜〜〜、すごく良かったんですよ〜〜〜。
キョロ充ロメオがジュリエットと出会って恋に落ちてしまって、忍んで彼女に会いに行く。お互いに愛を伝え合う。そして一夜にして大人の男性に成長する。とはいえ若人だから、キャピュレット家とモンタギュー家の争いを力ずくで収める力もない(そりゃそうだ)。でもジュリエットと秘密結婚して、もはやキャピュレット家は親戚、身内になったわけだから、今までのようにリア充仲間と小馬鹿にして諍いを起こすわけにもいかない。力ずくで収めることはできなくても、何とか争いを避けようと親友マキューシオを止めようとする。でもロメオがマキューシオを止めているところを、卑怯にもティボルトが背後から刺殺する。
このティボルトは酒に酔った勢いとかそういうのでなく、明確に、無防備な背中を殺意をもって刺していて、憎ったらしい奴でした。前にロイヤルシネマでギャリーさん演じるティボルトを見たときは、酒に酔っていた勢いとか色々あって刺してしまって、刺した後ティボルト(ギャリーさん)は愕然としたりあわわってなったり、で、またお酒飲んだり、というティボルトだったんですが、今回の福岡さん演じるティボルトはマキュを刺した後「ふふん」みたいな鼻で笑うような表情をしてみたり、本当に憎たらしい悪役で「お前が死ねばいいのに〜〜〜」と思わせる名演でした。ギャリーさんのティボルトも福岡さんのティボルトもどっちも素敵です。
で、親友マキューシオを殺害されたロメオ。自分が彼を引き留めていたせいで背後から刺殺される隙を作ってしまったという引け目もあるかもしれない。陰キャ寄りで、真面目系で、今までは友達に合わせてキャピュレット家を小馬鹿にしたりもしてたけど、ジュリエットとの秘密結婚後はどんなに煽られても剣をとれなかったのに、遂に剣をとって復讐してしまう。
で、倒れたティボルトの元に駆け付けてきたロメオの姑、キャピュレット夫人。演じる本島さんが本当にお美しい方で眼福。半狂乱になって髪を振り乱し、剣まで手に取るキャピュレット夫人のスカートの裾に頬を当てて許しを乞うロメオ。ここ泣いちゃったんですよね。え? ここ? って思う向きもあるかとおもうんですが、ロメオは本当にキャピュレット家と争いたくなかったし、親戚に誠意を示したかったし、本当に本心から夫人に許しを乞うてるんだよね、でも彼が許されることはなく、私たちは恋人たちがこの後死に向かって突き進んでいくしかないのを知ってる、っていうのが本当に切なくて、ロメオが可哀想で。
キャピュレット夫人も名演でした〜。人間としての彼女自身が見えるのってこのシーンだけで、他のシーンは夫に従順な良き妻、娘を気遣う優しい母、っていう、貴族女性の役割を果たしているシーンだけで、実際、彼女の人生の大半の時間はそういう役割を果たすものだったんだろうなって伝わってきます。でも、彼女にとってはティボルトとの不倫の恋が唯一彼女自身の本物の思いだったのでしょう。ロメオとジュリエットが二人だけで真実愛し合ったのと同じように、ティボルトとキャピュレット夫人もひっそりと本心からの愛を通じ合っていたんだ、彼女の一生に一度の恋もここで永遠に断ち切られたんだ、と思うと許しを乞うロメオも切なく、本当の愛を断ち切られてしまった彼女も切なく、やっぱ思い出しても泣けてきちゃう。
どーでもいいけど、昔はティボルトとキャピュレット夫人が不倫の恋人同士っだって知らなくて、このシーンで夫人がここまで取り乱す意味がよく分からなくて、「この人キャ夫人だと思ってたけどもしかしてキャ夫人じゃなくてティのおかんなのかな? もしくはティがジュリエットの従弟じゃなくて兄とかそういう設定に変えてるのかな?」とか思ってましたね…。

で、以降、ロメオとジュリエットは様々な行き違いから遂にはふたりとも死ぬしかなくなってしまうわけだけど、偉いのは漫然と死に向かったのでなく、生きて愛を貫くために戦って、でも上手くいかずに敗北して死んでしまうという点だと思います。人間性を確立し、自分たちの人生を勝ち取るために戦った。でも上手くいかなかった…。人間ドラマですね。

ロメジュリは衣装も豪華で美しく、見ていて楽しいるんるん 私はやっぱり煌びやかな衣装が好きだな〜。でも、マンドリンの踊りのミノムシ衣装はなんぞ?とやっぱ思っちゃう。普通の旅芸人っぽい衣装ではいかんかったのであろうか…。市民でないというのが一目で分かるのはある意味分かりやすいけど。どうでもいいけどここで他カップルの結婚式を見ていて自分とジュリエットの結婚式を妄想するロメオはキョロ充なのもあってすごくよかったです。その夢は叶わないんだけどさ。

それにしても全幕見ていて思うんですが、ロメジュリってホント3馬鹿は最初から最後まで(マキューシオとベンヴォーリオはマキュが死ぬまで)出ずっぱりで、男性ダンサーを鬼のように躍らせる鬼畜な演目だな〜と思います。でも見ている方は嬉しい! 3馬鹿はさすがの踊りでした。息の合った振る舞い、音楽性の高さ、3人で踊るシーンは本当に楽しい。高い跳躍に鋭い回転、きびきびとしたダイナミックな動きなど、テクニックの高さを感じる踊りでもありました。これだけ踊れるダンサーがこんなに沢山いるなんていい国だな日本〜!
さて、マキューシオの私的一番の見所は死の直前、ロメオを毅然と指さすところなんですが、木下さん演じるマキューシオは、それまでアホっぽい陽キャだったマキュが彼の中の怨念を爆発させる、彼自身のドラマや人生をもっと見たかった、と思わせる演技でした。
ただ、木下さんの踊っているところ、ちょっと膝が気になる。ロメオとベンヴォと見比べて、ふたりは気にならないんだけど、木下マキュだけちょっと膝が、なんかかくっとしてる気がして。膝が気にならなくなるともっと素敵だな! 私マリインスキーのキムキミン様好きなんだけど、好きなんだけど、彼も膝(たまに肘も)が気になる…。膝にこだわりがあるのだろうか…。
そうだ、マキューシオって、彼が死ぬときの演出が「もう分かったからそろそろ死んでいいよ」と思うくらいなかなか死なないことが多いと思うんだけど、今回のロメジュリでは割りとさくっとお亡くなりになって、しつこくなくてよかったです。あそこ、ほんと「死んでいいよ、はよ次いこ」って思ってしまうことあるからな…。

あとそうだ、パリス。パリスも本当にカンパニーやダンサーによって毎回すごい違うパリスだと思うんだけど、今回のパリスは別に格好いいとかはないけど普通に真面目で誠実そうなパリスで、ジュリエットに拒否される理由が分からず戸惑ったりムッとしたり、で、ムッとしても後を引かないあたりが「基本誠実でお坊ちゃんでお人好しなんだな」って感じでよかったし、結局ジュリエットに拒否される理由も分からないまま突然殺されちゃう(拒絶の理由は死の直前に悟ったかもしれない)のが可哀想でもありました。
私はパリスが格好いいともうロメオじゃなくてパリスでいいじゃんって思っちゃうんですが(どうでもいい情報)、井澤駿さん演じるこのパリスは、もしジュリエットがロメオと出会わず彼と普通に結婚していたら、少なくともキャピュレット夫妻よりは心の通じ合った温かく平凡な家庭が作れたんじゃないかな〜って感じがしました。

オーケストラはところどころちょっと微妙でした〜。金管中音域弱いかな。

と、まあ特に印象深かったところを中心に手短に振り返ったつもりだったけど結構長くなったな。今回のロメジュリがすごくよかったので新国バレエをもっと見たい欲が高まりました。とりあえず12月のくるみと2月のマノンはチケット買いました(ムンタギロフ回)。マノンは買い足したいかも〜。ムンギロフ様客演ありがとうございます! お怪我などなさらず無事に日本においでくださいませ〜〜〜!!

そうだ、話があっちこっち飛ぶんだけど、んで何の本で読んだか忘れちゃったんだけど、キャピュレット家とモンタギュー家の争いって、単に仲が悪いっていうのじゃなくて皇帝派か教皇派かの争いだそうで、どちらが勝利するかでヴェローナの街の運命も変わるっていう、個人がどうにか仲裁して何とかなるような問題ではないんだそうです。どちらにも、一族の栄達という欲望もあろうが同時に街のための正義も信念もあろうし、どちらが勝っても街にとってメリットデメリットがあるという。この皇帝派と教皇派の争いの主人公たちは、カノッサの屈辱で有名なハインリッヒ4世とグレゴリウス7世ということかと(多分…)。
そういう背景を知ると、ロメオとジュリエットの恋がいかに絶望的なものだったか、本当に絶望的で可哀想な気持ちになります。

あとそうだ、ロメオを演じた渡邊さんは千秋楽の後プリンシパルに昇進されたそうですね。プリンシパルにふさわしい実力だと思います! おめでとうございま〜す!



posted by 綾瀬 at 21:59| Comment(0) | 雑記・バレエ

2019年11月29日

ベルギー旅7日目(14) ベルギー旅最後の観光 聖血礼拝堂へ(1)

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自由ブルージュ博物館の見学を終え、いよいよ海外初ひとり旅の最後の観光に向かいます。

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広場は相変わらずいつでも素敵ぴかぴか(新しい)
クリスマスツリーの痕跡(?)もなかなか味があるかと。

で、次に向かったのはすぐ近くにある聖血礼拝堂です(上の写真には外観が映ってないけど)。こちらでは「聖血の遺物」と呼ばれる聖遺物を所有しており、これが何かというとキリストの血exclamation だそうなのです。
その昔、12世紀の十字軍に参加した当時のフランドル伯ティエリー・ダルダスがエルサレム王から贈られて持ち帰ったものとされているそう。でも本当は13世紀にコンスタンティノープルから持ち込まれたものだというのが最近の見方だそうで、多分パク…略奪…的な…感じで持ち込まれたんじゃないですかね。ここは私の推測ですけど。この「聖血の遺物」は今でもガラスケースに収められ、御開帳の時間に行けばツーリストも拝見することができます。

そしてこのキリストの血によって、聖血礼拝堂は「バジリカ」という、一般の教会より上位の称号を得ているそうです。中世から沢山の巡礼者が訪れた場所で、「聖血の遺物」も多くの方々から崇敬を受けた神秘的で神聖な聖遺物でありますので、私もそれにふさわしい態度で見学に臨みたいと思いますexclamation×2
また「聖血の遺物」にちなんで、毎年5月には「聖血の行列」というお祭りを行っていて、中世の扮装をした人々がブルージュの街を練り歩くのだとか。13世紀頃から続く何とも由緒正しい祝祭のようです。ブルージュの人々が「聖血の遺物」を自分たちの誇りとして、大切にしてきたことが窺えます。

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というわけで入口から入ると、いきなりとっても可愛い薔薇の模様のステンドグラス黒ハート
薔薇の赤、血の赤…に繋がるのかな? いずれにせよとても綺麗な窓でした。

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礼拝堂に行くまでにはまずこんな感じの階段を昇ります。これは昇ってから後ろを振り返って撮った写真。

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そしてexclamation こちらがexclamation

聖血礼拝堂です!

何となく赤文字に…。
市庁舎のバロック広間と相通じる、独自の極彩色に壁面を埋め尽くされ、とても豪華絢爛。
分かんないんだけど、ゴシック様式にしても、このキンキラな色彩はフランスやベルギーなどの文化圏に特に独自に発達したもののような印象を受けました。あまり沢山の国々を訪れたことがあるわけでないので単なる印象ですけども。
ただ、何か、色彩感覚が独自じゃないでしょうかね(悪い意味じゃないよ!)。金を基調として、赤、青、緑などカラフルな色を多用して、本当に美しく飾られています。

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祭壇のアップ。

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ステンドグラスも美しいぴかぴか(新しい)

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また別のステンドグラスのアップ。中世の装束で、右側の女性は例のエナンを被っているみたいですね。

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そしてまた別のステンドグラス。こちらの方はもう少し近世っぽい服装に見えます。髪型も、男性は巻き毛の鬘だし。

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説教壇付近の写真。外から差し込む光が神秘的できれいなんですが、写真は撮りづらい。なんか全体が白っぽくなっちゃいました。

というわけでいよいよベルギー旅最後の観光、聖血礼拝堂の見学をしばし続けま〜す。
本当に綺麗な礼拝堂で、観光客も勿論多いのですが、謹厳とした雰囲気が漂っていました。堂内に聖職者の方が常駐(いつもじゃないかも)してらしたからかも。



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posted by 綾瀬 at 22:52| Comment(0) | 16年12月ベルギー