2017年11月06日

ベルギー旅4日目(5) ついに神秘の仔羊へ 前編

やっとこさ聖バーフ大聖堂の中へ入ることができました。
でも! 何故か! 写真がないの!! 朝から頑張ってうろうろしたせいで疲れていたのか、何故か内部の写真がマジで1枚もありません…。何やってるんだー…。

大聖堂の中は、大聖堂という格式高い施設だけに大層重々しく、威儀を正した内装でありまして、内陣と身廊を物理的に区切ることになる壁面が黒と白の格調高い色調で造形され、とても美しかったです。内部はかなり広々としていて、大聖堂だけを見学するのにもある程度時間を取った方が楽しいと思います。

しかーし、私の一番の目的は「神秘の仔羊」です。
というわけで大聖堂の見学は後回しにして、「神秘の仔羊」が置かれている小部屋へとまっしぐらにGOしました。
確か、翼廊の端っこの方だったかな? チケットブースっぽいコーナーがありますので、そこで「神秘の仔羊」部屋へのチケットを購入します。4€だったと思う。大聖堂だけの見学は無料です。
何と、「神秘の仔羊」には日本語オーディオガイドのご準備がおありです。おおおーすごいぞ聖バーフ大聖堂! 日本語ガイドがあると嬉しくなってしまう。
でも、オーディオガイドの受取所はチケットブース(ぽいところ)でなく、その先にある「神秘の仔羊」部屋の中のカウンターです。最初、チケットブース(ぽい)で「めいあいはぶあんおーでぃおがいど?」って言ったところ「中にあるよ」と丁寧に教えてもらったのでした。

んで。中へ。
「神秘の仔羊」部屋は、まあほんと小部屋と表現するのがぴったりのちいさーなお部屋でした。
そのお部屋の中央に鎮座まします「神秘の仔羊」。パネルの背面もきちんとみられるよう、見学者がぐるりと周囲を一周して見学できるようになっていました。
オーディオガイド受取所は小部屋に入ってすぐの場所だったのですが、ここの係員の兄ちゃんが…いや、いいんだけど…。

スマホでずっとオモシロ動画見てるの……。

いや、いいんだけど……。

ニヤニヤし、時に「ぐふふ」としか表現しようのない忍び笑いを漏らしつつ……。

スマホでずっとオモシロ動画を……。

「めいあいはぶじゃぱにーずおーでぃおがいど?」と言いましたところ、無言でオーディオガイドの設定をし(ちゃんと日本語に設定してくれた)、ラミネート加工された英語の説明書を渡してくれましたが、その時も視線だけはスマホのオモシロ動画へ!!!

オモシロ動画から意地でも目を離さない。いっそ天晴れなその姿勢。

チケットブースのお兄さんが丁寧でプロフェッショナルな対応だっただけに、あまりの対極姿勢に「お、おう」となってしまいました。

ちなみにオーディオガイド受取所の兄ちゃんは、私が見学を終える時もずっとスマホの動画見てました。こちらを一瞥することすらなく…。

ま、まあ私はいいんだけど。でも多分この兄ちゃんは監視員的な役割も兼ねてると思うんだけど、いいのか聖バーフ大聖堂。あと「ぐふふ」はちょっとキモいぞ兄ちゃん。多分必死で笑いを抑えようとしてるんだろうけど。

いや兄ちゃんのことはもういいね! 
私が「神秘の仔羊」部屋に入った時、中にはそこそこ人がいました。10人くらいかな。お部屋が小さいので、それくらいの人数でも結構「混んでる」感があります。15人くらいいるとやや見づらいと思う。
室内は、部屋全体の灯りは絞られ、中央にある「神秘の仔羊」がライトアップされていました。

とりあえず並んで最前列へ。あとはオーディオガイドを順番にぽちぽちしながら説明を聞きます。
聖バーフ大聖堂自体は写真撮影禁止ではなかったと思いますが、こちらの「神秘の仔羊」部屋は写真NGでした。なので、見学後に売店で購入したポストカードをちょっとだけご紹介。

IMG_1183.JPG

こちらが、「神秘の仔羊」オモテ面のパネルです。オモテ面?で表現合ってるかな。パネルを開いた状態です。
「神秘の仔羊」は祭壇画で、祭壇画と言うとよく三連祭壇画が連想されるかと思うのですが、この「神秘の仔羊」はなんと24枚ものパネルから構成されていて、こちらのオモテ面は勿論、パネルを閉じた状態の時に信者たちが目にすることになるウラ面にも、素晴らしい絵画が描かれています。

で、こちらのオモテ面の中央下部の絵が、有名な「仔羊」。

IMG_1182.JPG

仔羊はキリストです。すっくと四本の足で立ち、こちらを見据えている仔羊ですが、体に穴が開けられ、そこから血が迸って盃へ注がれています。
何故彼は、今まさに命が流れ出しているのに穏やかにこちらを見据えているのか? 逃れようとしないのか? もがき苦しまないのか?
その答えは、前述の通りこの仔羊がイエス・キリストであり、私たちの罪を背負って犠牲となる救世主だから…、だと思います。私はキリスト教徒でないのでまあ私の罪は置いといてください。

何だかねえ、キリスト教徒ではないですが、敬虔な気持ちになる絵でした。

天使たち、聖人、聖者、信徒たちに囲まれて、臆することなくこちらを見返す仔羊…。
そうそう、この信徒たちなのですが、色々な人種・民族のひとびとが描かれています。
主に左下にいる人々ですね。服装、特に帽子などの被り物で判別しやすいでしょうか。東欧風、中東風、中国風、などなど…。
これは仔羊の栄光を讃えるための「あらゆる国民、部族、民族、言語からなる大勢の群衆」を表現しているものだそうです。
正しい行いをする人々には、どのような出自であろうとかように天国の門は開かれているというわけです。
ちなみに右上奥の一群は女性ばかり! この一群が一番人数が多いそうです。
ポストカードの写真では分かりづらいですが最前列の女性たちは自分自身を示すモチーフを手にした聖女たちです。向かって左から、仔羊を抱えた聖アグネス、塔を持った聖バルバラ、矢を持った聖ウルスラ、花籠を持った聖ドロテア

夢中になってじっと絵を見ていました。

底抜けに明るい草地の緑と空の青(※写真だと色飛んじゃってますが、実物はすっきり鮮やかなのです)。
上等な装束をまとった多くの信仰者たち。
今まさに犠牲にならんとしているのに暗さも悲愴さもなく、毅然とこちらを見返してくる仔羊…。
大地には花々が咲き、果実が結実し、遠目に見える都市は美しく整然と発達し…。

何とも引き込まれる絵画です。
まだ書き足りないので次回へ続く〜〜〜。

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posted by 綾瀬 at 13:37| Comment(0) | 16年12月ベルギー

2017年11月15日

ベルギー旅4日目(6) ついに神秘の仔羊へ 後編

IMG_1183.JPG

前回も掲載しましたが、「神秘の仔羊」を含む祭壇画のオモテ面全景。
下段中央の「神秘の仔羊」については前回の記事であれこれ思うがままを綴りましたので、今回の記事は上段について述べます。

上段中央の、赤い立派な装束を身に纏った威厳のある男性。この方が誰か、と言いますと、誰だか分からないのだそうです! 正確には、「父なる神」か「キリスト」か、が判明していないのです。

と、言いますのも…。

この中央の赤い装束の方は、両脇に聖母マリアと洗礼者ヨハネを従えて描かれています。言うまでもないよーな気はしますが一応書いておくと、向かって左側の青いシンボルカラーの衣装の女性が聖母マリア、向かって右側の緑のマントの方が洗礼者ヨハネです。

キリストが、両脇にこのお二人を従えた構図というのは、キリスト教においては伝統的な、言葉は悪いですがいたってよくある構図です。ていうか、お約束。

じゃあ赤い装束の方はキリストで決まりなんじゃ? と言うと、この赤い装束の方はキリストを描く時にきわめて一般的な条件を必ずしも満たしていないのです。
例えば、キリストを描く時、大抵は手に傷が描かれ、足元は素足のまま。でもこの絵は、手には傷はないし靴も履いています。
それから、キリストが物を持つ時には多くは本を持っている姿で描かれるところが、ここでは王笏を持っています。

それだけでこの方がキリストでないとは言えないのでは? という気もします。なんせ傍らに聖母マリアと洗礼者ヨハネを従えた構図で描かれていて、この時中央に来るのはイエス・キリストというのがお約束なのですから。

でも、この赤い装束の方にはイエス・キリストとは言い切れない、「父なる神」を示す表現があちこちにちりばめられています。
例えば、頭にかぶった三重の宝冠。これは三位一体を示す教皇の冠なのだそうですが、キリストよりは「父なる神」を示すものだそうです。
また人物の背後の金色の部分や、肩から垂らしているストラにはラテン語で聖句が記されているのですが、ここに記された聖句はいずれも「父なる神」を表す聖句であるそう。
それに、この赤い装束の方を「父なる神」と推定すると、このパネル全体を通しての「三位一体」が完成する、という条件もあります。

…というのは。
下段中央の「神秘の仔羊」。ここで描かれている仔羊は「イエス・キリスト」そのものです。んで、その仔羊の頭上に目を向けると、そこには後光に包まれた鳩の姿が描かれています。これは、鳩の姿を借りた「精霊」です。ここまでで、キリスト教における重要な神の捉え方である「三位一体」のうち、「イエス・キリスト」と「精霊」までが揃いました。あと、足りないのは「父なる神」の像だけです。

とすると、上段中央の赤い装束の方が「父なる神」であれば、ここに「三位一体」が完成するわけで……。

じゃあ「父なる神」で決まりか、と言えばやはりそうでなく(!)。
この赤い装束の謎めいた方は、キリストを示すモチーフにも取り巻かれているのです。
何かと言いますと、玉座の後ろのタペストリーに描かれているモチーフで、
・自らの血を雛に分け与えるペリカン
・葡萄の蔓
・ペリカンの頭上に渡された銘帯(に、ずばり「イエス・キリスト」と書かれている!)
これらはいずれも、紛れもなく「イエス・キリスト」のモチーフです。一部、モチーフどころかずばり書かれてるようですが。

他にもあって。
前述の通り、イエス・キリストを中央に聖母マリアと洗礼者ヨハネが隣り合っている構図はキリスト教のお約束ですが、この絵ではもう一つお約束が描かれています。洗礼者ヨハネが指を差しているのですが、彼が指を差すのは常にイエス・キリストであるというのがお約束です。

もしこの方が「イエス・キリスト」でなく、「父なる神」であるとすると、異例中も異例、もしかしたら世界で唯一の構図であるかもしれないようです。
こういった条件から、私はやはり中央の赤い装束の方は「イエス・キリスト」なんじゃないかな〜という印象を持ちました。

でも、それならば何故「父なる神」のモチーフがあちこちにちりばめられているのか。
絵画というのは見る側の知識や教養が問われるものですが(近代に至るまでは)、と言うことは勿論、描く側の画家にも一流の知識や教養が問われるわけで、作者が意図的にこういった謎めいた人物を描いたのは間違いないと思います。

最初に述べた通り、結局、この方が「イエス・キリスト」なのか「父なる神」なのかは結論が出ておらず、議論が続けられているそうです。

作者は異例な「イエス・キリスト」を描いたのか。異例な「父なる神」を描いたのか。あるいは、両者の融合した姿を描いたのか。
全ては謎に包まれています。

ところで、この絵はドイツの大画家デューラー大先生も見にいらしたそうです。
デューラーはこの絵を見て、どういう結論を導き出したのでしょうか。

私はデューラーの絵をまだナマで見たことがないので、いつか見るのを楽しみにしています。

最後に「神秘の仔羊」の作者のことを少し備忘録として書いておきます。
作者のファン・アイク兄弟のうち、メインの作者は兄のヒューベルトだったと推定されています。この兄のヒューベルトは、他に彼のものと判明している作品が現代に1作もなく、事跡も殆ど伝わっていないため、一時は実在さえ疑われていたようです。一方、弟のヤンはこの時の領主であるフィリップ善良公の目に留まり、宮廷画家として迎えられたことからも一族の中で知名度抜群。そうしたことから、メインの作者は弟のヤンと見做されていたこともあったようですが、現在では祭壇画の大部分を兄のヒューベルトが手掛けたことが分かっているそうです。特に下絵については、アダムとイブ以外は全てヒューベルトが描いていると、逆に言えばアダムとイブは明確にヤンが描いていると判明しているそうです(アダムとイブは、上段の一番端と端のパネル)。

お兄さんのヒューベルト、こんなに素晴らしい絵画の作者なのに他に作品が1作も残っていないなんて残念すぎる…!
もしかしたら、まだ判明していないだけで世の中のどこかに埋もれていたりもするのかもしれませんが…。

文字ばっかでスミマセン。
「神秘の仔羊」は本当に素晴らしい祭壇画でした。
まさに至宝そのもの。唯一無二の素晴らしい絵です。
ベルギーへ行かれる方は、是非是非ご覧になることをおススメいたします(*´ω`*)

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posted by 綾瀬 at 00:11| Comment(0) | 16年12月ベルギー